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敏洋’s 昭和の恋物語り

長編恋愛小説 〜水たまりの中の青空〜(十五) 激しい怒りの気持ちが 

2015年07月21日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



麗子は、彼が泣いていることに気が付いた。
彼の目からこぼれている涙を、麗子は優しく拭き取りながら「大丈夫よ、大丈夫。私が、導いてあげるから」と、彼の耳元に何度も囁いた。

“導くだって? 冗談じゃない!僕の何を知っていると言うんだ、麗子さんが”

激しい怒りの気持ちが、初めて彼を襲った。
今までの理不尽な仕打ちに対して、怒りにも似た思いを抱いたことはある。
しかしこれ程の憤怒を感じたことはない。

“怒り? 僕は、何に対して怒っているんだ。
麗子さんの傍若無人さに対してなのか? それとも、それでも惹かれ続けている僕自身に対してか?”

そんな思いが、頭の中で渦巻いた。
そして、彼の心の中で何かが弾けた。
彼の行為は、一気にエスカレートした。

「待、待って! こんな所じゃ、嫌! 誰かに見られるかも」
そんな麗子の言葉も、彼の耳には届かなかった。
ひたすらに、麗子の唇を求め続けた。
やむなく麗子は、暫くの間彼のするがままに任せた。
婚約者とのそれでは感じない歓びを享受しつつも、明るいパーキングエリアであることに抵抗を感じた。

彼の唇が離れた瞬間を逃さず、麗子は彼をなだめるように
「焦らないで。麗子は、逃げはしないから。今夜の麗子は、あなたのものよ」
と、彼の耳元に囁いた。
そして彼をしっかりと抱きしめながら、座席に押し戻した。

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