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第53回 昭和33年晩秋 そろばん教室(1)
2014年04月21日
テーマ:テーマ無し
以前から近所の高校生のきなえちゃんと節ちゃんと姉はそろばん教室に通っていて、そろばんが上手だ。
先生が若くて優しくかっこいいらしく、3人とも先生のことをニコニコ顔で話しているから、好きなことが分かる。
時々、先生がサイクリングに連れて行ってくれるので、嬉しそうだ。
だいぶ前に、「青い山脈」と言う映画が近くの映画館で上演され、歌も流行した。
その映画のポスターには、女学生達と先生のサイクリングの絵が描かれていたのだ。
映画を観ていないが、サイクリングは楽しいのだろうと想像していた。
6年生の時、左ききなのに右手で上手にそろばんを弾く恵子ちゃんと、そろばんを弾かずに指だけを動かして、計算をしている利くんに驚く。
利くんはそろばんの目を思い浮かべて、指だけを動かし暗算をしていたのだ。
2人のようにそろばんが上手になりたいし、サイクリングにも行きたいので、そろばん教室に通いたくなった。
先生は、昼間は役所の仕事をしていて、週2晩だけ楽しみで教室を開いているらしい。
中学1年の秋から、姉達について教室に行ってみると、色が白くて優しそうな先生が笑顔で迎えてくれた。
姉達も同級の礼子ちゃんも、色の白い男性をかっこいいと思っているようだ。
私は日焼けしている男の人をかっこいいと感じる。
大好きな敏春先生も昌弘先生も、色白でなく日焼けもしていた。
親しいと思っていた聖君も色黒の方だ。
教室では6級の問題集から練習を始めると易しく感じ、年末になると70点取れるようになった。
「5級に進もう。」と先生。
5級に進んだのはいいが、これが難しい。
制限時間内に、全問するのが精一杯で、合格点の70点が、なかなか取れない。
かけ算とわり算と見取り算の練習が終わると、「1番点数の悪かったものを、もう1回練習しよう。」と先生。
点数の一番悪いかけ算をもう1回して、正解表を見て調べると、間違いが増えて点数が悪くなった。
3日後の練習の日、3種類の問題に取り組んだが、50点か60点しか取れない。
気を取りなおして一番悪かったわり算をもう一度やってみたが、もっと悪い点だ。
次の日も次の時も、点数が良くならない。
がっかりしている私の顔を見て、先生は「1番点数の悪かったものを、もう一度したい人はがんばろう。」と言うようになった。
私以外の人は、そろばんの練習を繰り返すと、点数が良くなったと笑顔だ。
「家でもここと同じように練習したら、もっと上達するぞ。」と、先生は私の顔を見てからみんなの方を見て言う。
私は家で練習する気にならない。
そろばんの練習が楽しくなくなったし、練習しても上達しない気がするが、やり方は身についたので良かったと思う。
しかし、風を切って走るサイクリングは気持良く楽しいので、一緒に行くためにそろばん教室を続けた。
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