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第30回 昭和31年盛夏 助け合うことは幸せ  

2014年02月26日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し


5年生の夏休みの暑い日、「アツイアツイ!ただいまー。」と買い物に行った母が、汗を拭きながら帰って来ました。
「小児麻痺にかかって、手と足が不自由な男の子を、おんぶしているお母さんに会ったんよ。」
「病院に薬を貰いに行くんじゃって。」
「2人が汗をかいちょっちゃったんで、日傘をさして送って行ったから、遅くなったんよ。」と言います。
「『お兄ちゃんは、暑いから留守番の方が、ええんじゃあないの?』と聞くと、『この子は出かける方が好きなんよ。いろんな所へ連れて行きたいけど、もう乳母車は窮屈で乗れんようになったの。』と、男の子のお母さんが言っちゃったんよ。」
「本当にえらいお母さんよ。あの頑張っている親子に、元気をもろうたわ。」と母。
以前、窮屈そうに乳母車に乗った大きい男の子と、それを押しているお母さんに会ったことがあるので、私はすぐあの2人と分かりました。
母は水を飲んでひと息ついて、そうめんを湯がき始めました。
家の中が、もっと暑くなったように感じます。
風の通る涼しい北側の廊下に飯台を持って行き、干し海老でだしを取った汁かけそうめんを、おいしく食べました。
食べ終わって、「今日はとっても暑いから、おやつはアイスキャンデーにしようかな。」と母が言いました。
「ヤッター!」と弟と私は大喜び。
東隣の町内の肉屋さんが、アイスキャンデーを作って売っています。
私は母の日傘をさして、買いに行きました。
「小児麻痺の男の子とお母さんが、一番はじめにアイスキャンデーを食べるのがいいわ。」と思いました。
帰りに、病院から帰る2人に出会ったら、プレゼントしようと思って、キョロキョロしましたが、会いませんでした。
翌日、1人で田舎のおじいさんの家に、行きました。
おじいさんに、昨日の小児麻痺の男の子とお母さんのこと、日傘をさしてあげた母のことを話しました。
おじいさんは「体の不自由な子どもを、神様から授かった宝として、大切に育てる家族は、幸せになるんじゃ。」
「尊敬し合って助け合って暮らすことが、幸せなんじゃ。」と話しました。
「そんけいって?」と質問すると、「としこのお母さんは、小児麻痺の男の子とお母さんや、としこやみんなを、大切な人と思って尊敬しているんじゃ。」とおじいさん。
尊敬し合って大切にし合い助け合うことは、ステキなことと思いました。
2泊して家に帰ると、目の不自由なおじさんが来ています。
夏はラムネ作りが忙しくて疲れるので、しばしば父はおじさんに体を揉んで貰い、疲れが取れて元気に働くことができます。
終わったので、おじさんを家の人に迎えに来てもらうために、母が電話をしましたが留守のようです。
いつもは、小学生の息子さんか娘さんが迎えに来ます。
「としちゃん、送って行きなさい。車に気を付けてね。」と母。
どうしたらよいか分からないけど、ついて行きました。
おじさんは、白い杖を突きながら、歩くのが上手です。
バス通りに出ると、おじさんは私を道路の端に押して、立ち止まりました。
後からスクーター(オートバイのような二輪車)がやって来て行ってしまうと、また、おじさんは杖を突いて歩き始めます。
私より早くスクーターに気が付き、歩くのが上手なおじさんに、私が連れて行って貰っている気がします。
治療院の看板と魚屋さんの看板のある家に着きました。
内から、おばさんが出て来て「どうもありがとうね。」と言って、小あじの干物を紙に包んでくれました。
私はちっともお世話をしていないし、役にも立っていませんが、遠慮なくあじを貰って帰りました。
以前、近くに住んでいる足の不自由な美木お姉さんが、爆弾穴に落ちた私を助けてくれました。
その後、美木おばさんにもずっとお世話になっています。
美木おじさんは工夫して歩きやすい補助足装具を、お姉さんの足が大きくなるたびに作り替えています。
美木さんの家族は息子さんと娘さん2人の5人家族で、私の家族は親切な美木さん家族にお世話になっています。
私は体の不自由な人がいる家族の人達は、助け合うのが上手だと感じます。
また時々、我家で醤油などが急に切れた時、近くの散髪屋さんやふすま屋さんに借りに行きます。
でも、すぐに返しに行ったことはなく、借りっぱなしです。
たまに、我家にも近所の人が、借りに来ることがあります。
私のまわりには、「助け合う暮らしがある。」と思いました。
しかし、助け合うことで1つだけ、嫌なことがあります。
私は雨傘を学校に忘れて帰り、急に雨が降った時助かるのです。
そんな時、友達のお母さんが、傘を持って迎えに来てくれるのを見て、羨ましく思います。
だから最近は、学校に傘を置き忘れないようにしているのです。
急の雨の時、母に傘を持って迎えに来てほしいと、思っているからです。
ところが、急に雨が降り出した時、近所の友達のお母さんが、ついでにとわざわざ我家に寄って、私の傘を学校に持って来てくれます。
ですから、残念なことに、母が傘を持って迎えに来たことは、一度もありません。
近所の人は、母が長いこと病気だったので、親切心から私の傘を持って来てくれます。
ですが最近、母は元気になったので大丈夫なのです。
いつか、母が傘を持って迎えに来てくれるのを、私は楽しみにしています。

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