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第44回 昭和32年 図書館の女の先生 

2014年04月01日 外部ブログ記事
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6年生の7月、クラスで7月生まれの誕生会があります。
誕生月の人が、好きなプログラムを計画して、発表などをすることになっていました。
7月生まれの私は小学2年の時から、劇に出て母に「とても上手ね。」と誉められたいと思っていました。
最近は教科書の中でも、会話の多いお話を、朗読するのが好きです。
誕生会に1人で出来る劇をしようと、思いつきました。
何の劇をしようかと考えた時、親しくなった図書館のお姉さんの先生を、思い出しました。
5年生の時、日曜学校の帰りに、嬉子ちゃんと真知子ちゃんと、図書館に寄った時のことです。
しばらく本を読んで、嬉子ちゃんと真知子ちゃんの2人は、読み残した厚い本を借りました。
「あなたは借りないの?」とお姉さんの先生が、私に聞きました。
「もう読み終わったからいいの。」と私。
借りて帰っても、運動をしたり遊んでいると読む時間がないし、本を失ったら困るので借りないのです。
それに、私は長いお話を読むのは苦手です。
1日で読みきれない時、つぎの日に続きを読んでみると、登場人物もあらすじも不確かで、また最初から読まなくてはならないので、なかなか終わりまで読みきれません。
だから、読み切れるように、大きい字の短い本を読むことにしていました。
教科書のお話は好きです。
一章は、1日で読み切れる長さだし、2・3回読むとお話の内容がだいたい分かるからです。
図書館でその時、私は以前から気になっていたことを、先生に質問しました。
「顔と手の傷はケガのあと?痛かった?」と。
「これは癩(らい)という病気のあとなの。もう治ったから大丈夫よ。痛くないのよ。」と、先生は笑顔で応えました。。
日曜学校の聖書のお話で、癩のことは聞いたことがありました。
先生が癩と言う病気にかかっていたことに、私達3人は驚きましたが、その日から先生と親しくなったのです。
劇の本を借りるために、学校の帰りに図書館に寄ることにしました。
「誕生会で1人で劇をしたいの。何かいい劇の本はありますか?」と、お姉さんの先生にたずねました。
「そうね。」と言って、先生は本棚のところへ行きます。
しばらくして、2冊の本を持って来ました。
「あかずきんとおおかみとあばあさんのペープサーを作れば、人形劇ができますよ。」
「こちらは、はだかの王様の指人形の劇よ」と先生。
あかずきんの内容は幼い子用と思いました。
はだかの王様のお話の長さは、ちょうどいいのでこちらに決めました。
はだかの王様は、親指に目と鼻と口をかいて王冠をかぶせるだけです。
これがおもしろいので、気に入りました。
家に帰って、紙や布切れを出してきて、本を見ながら指人形を作り始めました。
王様は、初めは立派なマントを着た指人形です。
仕立て屋と町の人と子どもも作りました。
つぎに台詞ですが、すぐに覚えられそうにありません。
家に長く置いておくと、劇の本が何処かに行ってしまったら困るので、ノートに写して、本を早く返すことにしました。
あらすじは、だいたい知っているので、台詞だけ書いていくと、長くありません。
翌日、図書館に本を返してから、家で台詞を話すように読んでみました。
ノートに写す時も読みながら書いたので、早く覚えられるように思います。
万一忘れても、台詞のノートを見ればいいので安心です。
威張った王様の声、ずる賢い仕立て屋の声、お世辞を言う仕立て屋の声と、町の人と子どもの声を工夫して練習しました。
いろいろな役になって劇をするようで、楽しくなりました。
しかし、指人形の劇をみんなの前でするのは初めてで、少し不安です。
誕生会の日です。
みんなが熱心に小さい指人形を見てくれたし、先生に「とてもよかったわ。」と誉められて、満足の気持ちになりました。
学校からの帰りに、親しい瞳ちゃんと一緒に図書館に寄って、裸の王様がうまくいったことを、お姉さんの先生に報告しました。
「それはよかったね。」と先生もニコニコの顔です。
嬉しくなって、瞳ちゃんと大声で話したり笑ったりしたので、先生に「シー、静かに。」と注意されてしまいました。
家に帰って家族にも見せると、みんなで大きい拍手です。
そしてその時、小学最後の発表会の劇に必ず出て、母に「とても上手だったよ。」と誉められたいと強く思いました。
その後、「図書館の先生が癩という病気にかかって、顔と手に傷が残っちょるけど、もう治ったんじゃって。」と母に話しました。
「先生は、病院で治療を受けたから治ったんよ。えかったねえ。」
「癩は伝染すると言うて、家族から離されて、子ども大人も遠くに連れて行かれたらしいんよ。家族と会えんのじゃって。その人たちは気の毒じゃわ。ほんとうは伝染力は弱いらしいんよ。」と母。
病気だけでもつらいのに、家族と会えないなんて、ひどいことだと感じます。
つらい人や弱っている人が、どうしてもっとつらい目に会うのでしょうか? 
私はそのことがとても気になりました。

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