+++嫌いでさえなければ、結婚したら良いのじゃな
いの? 結婚したら好きになって愛せるようになるも
のじゃないかしら?」
35.お茶席と同じ
「大胆な意見だね。もし結婚してみて、好きになれな
かったらーーー?」
「条件を計算して、好きになるべきだと判断したら、
私はその人を好きになる事に決めます。そうしたら、
好きになって愛せるようになるに違いないーーーと思
います。 自信があるわ」
「どうして、自信があるーーー?」
「セックスの効用と思う。初めはそれほどでなくて
も、繰り返していると不思議に愛情みたいなのが湧
いて来ます。愛着というのかしら? 学生時代の経
験よ」
「愛着が湧くのは確かだーーー」
「垣根が一気に取れるって感じ。男女の秘密を共有す
る為かしらね。でも、ひょっとしたら、これは女特有
のクセかしらーー? あの頃も、男の子達はそんな風
でなかったみたいだからーーー」
「食べている内に食欲が湧くみたいに、結婚して抱き
合い秘密を共有している内に愛情に変化して行くっ
て訳かい? なるほど、案外そんな気もするね」
「ほら、お茶席でも、作法とか礼儀とかが順位として
優先じゃないの? そんな作法や環境の中に身を置い
ていたら、後から自然に落ち着いた心が湧いて来る
わ」
「先に形を作ったら、それに心が後で付いて来るって
訳かい? なるほどねえーーー。貴女は大したことを
言う」
「ウフフ、そうよ、きっと」
「昔は殆どが見合い結婚だったらしいから、実際にそ
うだったんだろうな。でも、それが上手く行っている
ケースが多いようだなーーー。あれは確かに形を先に
作っていたんだ。極端な場合は、結婚式で初めて顔を
合わせるのも、珍しい事ではなかったようだよ」
「私の場合は、もっと現代的よ」
「現代的ーーー?」
「抱き合ってたら自然に愛情が湧いてくるのは本当だ
と思うけれど、それを待つのじゃなくて、愛情は意志
で作り上げて行くものと思ってるわ」
「なるほどーーー。 パトロン探しといい、越後の女は
しっかりしているねえ、流石に」
「ウフフーーー」
(つづく)
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