＋＋＋相撲取りにも贔屓筋があるって聞くのは、それ
だな。一種の後援会かーーー」
「そう、後援会」

３４．結婚は経済

　女は、何でも逞しく食べた。デザートのフルーツに
なったが、「体を動かすから、幾ら食べても太らな
い」と言った。
　蛋白質が安く取れるように、アパートに魚の缶詰を
沢山買い置きしてあると聞いて、泣かせる話ではあっ
たが、泣く代わりに私は食後のコヒー二つを追加注文
して、缶詰と相殺を図った。

「夢を助けたい気持ちは山々だけれど、事情があって
僕のお遣いの範囲では無理だよ。 それより、お金持ち
の夫を持てば、イコール生涯のパトロンになるじゃな
いの？　結婚を、パトロン探しの場所と考えた事は無
い？」

「両立を狙って、私もそこの処を考えました」
「結婚するとすれば、どんな人を選ぶかな？　パトロ
ンの資格優先？」
「私の場合ーーそうですね。結婚は恋愛の問題では
なくて、経済の問題と考えています」
「経済を優先するのは、あまりロマンチックじゃない
よね？」

「ロマンチックは男の作る専売特許よ。女は利に聡い
です。考えて御覧なさい、妻や子を飢えさせる男だっ
たら、子育てどころじゃないわ」
「なるほど、イケメンだろうが、関係ないかーーー。
値打ちはそこにあるのに、男はこれを案外忘れ勝ち
だな。一本取られたね」
「ウフフーーー」

「だから例えば、同じ練習グループや劇団の男のダン
サーなんかとは、恋に落ちないって訳だな。相手にお
金が無いからーーー」
「ええ、好きになってもーーー、結婚は避けます」
「仲良くなって、寝る事はあってもーーー」
「ウフフーーー」
「しっかりしてるーーー」

「貴女には、結婚相談所とかお見合いパーテイが良い
かもね？ パトロン選びで目が肥えているからーーー」
「私も本気でそう思ってるわ」
「貴女は美しいから、その気で見合いパーテイに出席
したら、申し込みが多いだろうね。美人の特権」

「ウフフ、そうだと良いですけれどーーー」と、コー
ヒーを一口含んでから女は肯定的にうなずいた。暫く
考えて言った：
「食欲はいつも食べる前にあるとは限らないわ。 お
見合いで愛をそれほど感じなくても、少なくとも嫌い
でさえなければ、結婚したらいいと思う。結婚したら
好きになって愛せるようになるものじゃないかしら？」

（つづく）