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作品名 67になっても、たまにはデートしたい(21) 評価 評価(1)
タイトル 67になっても、たまにはデートしたい(21)
投稿者 比呂よし 投稿日 2014/03/14 10:26:28

+++駐車場で私がバレエの練習とは何かと問うた
時、「直ぐに判るわ!」女は答えたが、これが返事だ
った。女は私の心臓を捉えて、キュン!と言わせた。

21/60.継之助

 レストランでテーブルに着いてから、ただ者ではな
いと思って改めて女を眺めると、腰と太ももの辺りに
不思議な魅力があり、確かにモーツアルトの親戚に思
えた。強い磁力で自分が引きつけられるのを感じつ
つ、女が若い男をパトロンにしたがらない理由が良く
判った。恋がどうとか結婚してくれとか、バレエの邪
魔になるのだろうか? これを確かめたら:

「若い人は何度もしつこくてーー、疲れるの」と女が
顔をしかめた。
 度数に基準を置く赤裸々な返事に、私は自分の歳を
指摘された気がした。憮然とした気持ちで、
「和食党だから、僕はあっさり味だよ」と応じたら、
女はニコと笑った。

「私も和食の方が好き!」 
やっぱり五十八で良かったらしい。

 食事をしながら、女は自己紹介をした。
「越後長岡の産ですーーー」
 この時こそ、私は教養を誇示すべきだと考えて、
「長岡藩に河井継(けい)之助という人が居たね
えーーー」
と物知り顔で応じたら、これは失敗だった。

「つぐのすけ」と女が、先輩顔をしてしっかり訂正し
たからである。「ガラスの壁」と合わせて、私はやら
れ放し。苦笑いしながら、仕返しを試みた。

「成るほど、越後の百科事典には敵わないね。 貴方が
今居る大阪は越後から遠いよね。 越後にはさっきみた
いに、ガラスの壁で人をびっくりさせる不良が沢山い
るのかい?」
「不良じゃなくて、最近では非行と言います。あの辺
りでは、どっさり採れます」
いちいち言葉の訂正をされるのは、敵わない。

「ふうーん。 じゃあ、今ここに居るのは産地直送の非
行って訳だ。道理でさっきのガラスの壁は、ヒヤリと
する程リアルだった。見事だったねーーー転がった処
なんか、あれは実に真面目な非行だったな」

「アハハーー、そりゃあ、随分練習をしてますもの」
「ふうーん」
「けれども、長岡の高校時代の私は、非行ではなくて
良い生徒でした。超まじめよ。成績も悪くなかった
しーーー」

「だから「つぐのすけ」を良く知っていて、そんな風
に勉強したから難しい大阪の芸術大学に入れたんだ
な」
 女は学生時代の話をして、二年生の頃からバレエに
興味を持ち始めた事、デザインの勉強と平行してバレ
エの専門学校に通った話をした。

(つづく)

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