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作品名 アカンタレの話(19) 評価 評価(1)
タイトル アカンタレの話(19)
投稿者 比呂よし 投稿日 2014/01/14 09:22:31

+++確かに女の前でベソをかきはしなかったもの
の、逃げた行動は「泣いたも同然」である。そうな
れば、それを正当化出来る第三の挨拶の開発が、新
たに必要になった。その開発したものを後日実際に
実行するようになるが、詳細は後で述べたい。

19.アカンタレ
 他方でそんな私に比べて、クラスで目立たず一番
温和しかったあの女の子は、どうだ! お化けの出
そうな恐ろし気な山中で、実に平然としていたでは
なかったかーーー。私は「ぶざま」だったとしか言
いようがなく、どんな言い訳も立たない。プライド
が根こそぎやられた。

 アカンタレ!の烙印を自ら押したようなもので、
これが事件の翌日から私を苦悩させた。口をつぐん
でおれば、山中で起きた「アカンタレ」の秘密を誰
も知りはしない。女は、私の事を面白おかしく仲間
におしゃべりする性格ではない。事実、親も級友も
女先生も、周りの誰一人気が付かなかった。

 けれどもーーー、当然ながら例外が一人いる。あ
の女である。女の情けに縋って、私は辛うじてラッ
キーだったのである。口を封印してくれた女に、恩
義を感じた。が、同時に心底恥じ入り、私は女の前
に二度とよう顔を晒せなくなってしまった。好きだ
っただけに、そのショックは一層大きかった。

 女の姿を見るのは、自分の「アカンタレ」と正面
から向き合うようなものである。これが辛く、消し
ゴムで消し、事件を無かった事にしたかった。女と
出遭わないように、帰宅する道も変えた。懸命に記
憶から消そうとした。

 けれどもーーー矛盾しているが、幾ら女の姿を拒
否しても、或いは拒否すればするほど、自分の中で
山中の景色が一層鮮明に浮き上がり、焼き付いたよ
うに記憶から拭い去ることが出来なかった。

 学年が上がり、中学から高校になっても、大学生
になり社会人になってさえ、何かの拍子に高倉町と
いう言葉を耳にしたり目にするたびに、脳裏に必ず
女の姿を思い浮かべずにはいられなかった。それが
何とも苦い味で悔しかった。
(つづく)

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