ナビトモのメンバーズギャラリー

条件で調べる

カテゴリ選択
ジャンル選択

前の画像

次の画像

ギャラリー詳細

作品名 エライコッチャの話(1) 評価 評価(1)
タイトル エライコッチャの話(1)
投稿者 比呂よし 投稿日 2013/12/12 09:55:08

1.百倍
 
 男の口の機能は元来食べるだけであるが、女の口
は食べるのとしゃべるのと両方いける。私の配偶者
は、特におしゃべりである。 少なくとも私の百倍は
しゃべる。女友達の「36歳バツイチ子持ち昆布」
も、負けず劣らずおしゃべりで、一人でありながら
軽くニ人前程度の存在感を示す。

 配偶者は、ある時なんか話し始めると、スーパー
マーケットでの買い物の話から始まって、隣近所の
悪口へと言及し、ウチの社員への苦情、次に野田首
相への同情、死んだ私の母親への批判まで延々と続
く。
 話はパノラマの如く展開し、あっと言う間に40
数年前に遡って、結婚前に私がどんなウソをついた
のかだって、女の脳には克明に記録されていて、昨
日の出来事みたいに生々しく再現される。

 そんな時に、降り掛かる火の粉を払おうと思って、
私が「そうだったかなあ?」なんてとぼけた風な相
槌を打つと、どえらい目に遭う。女は昔の悔しさに
自己陶酔しているから、物凄い形相で睨みつけ、今
にも離婚を宣告しそうな剣幕になる。
 こっちにしてみれば、当初のスーパーの買い物の
話が、どうして離婚問題へ繋がるのか、プロセスが
簡単には判らない。それにしても、女の記憶力は怖
い。

 結婚初期で私が未だ女のおしゃべりに、充分慣れ
切らない時代の失敗談である:配偶者が一つの話題
でしゃべり始め、それが無期限に続く気配を見せ始
めた時に、私は何とかしてそれを止めさせようとし
たものである。相槌を打ちながら、もっと短時間に
終了しそうな別の話題へと誘導を試みたのだ。けれ
どもこの作戦は大抵失敗した。

 なぜなら、先の話題は既に八割方まで済んでいて
終了間際だったのに、不慣れな私はその見分け方が
判らず、新しい話題を提供した形になってしまうか
らだ。また勢いを盛り返して再スタートを切るから、
おしゃべりは予定の1.8倍にはなってしまう。

(つづく)

前の画像

次の画像



【比呂よし さんの作品一覧はこちら】

最近の拍手
全ての拍手
2013/12/13
ミルフィーユ
2013/12/12
2013/12/12
みのり
2013/12/12
拍手数

4

コメント数

2


コメント

コメントをするにはログインが必要です

さん

男性は、そのようなおしゃべりな奥様が嫌いかといえばそうでもないと思います。とりとめのない内容から、何か得る物もあるだろうと思っているみたいです。私は結婚当初、そんな風な女性のおしゃべりができない人だね、と言われ、今に至ってますから...。

2013/12/12 10:08:17

比呂よしさん

くま子さん 比呂よしから。
 
 コメントを有難うございます。

 私の場合おしゃべりの女性を、「好きか・嫌いか・何か得る
処があるや無しや」、の域を私は既に済ませている気がしてい
ます。

 或る時配偶者に、「(君は)おしゃべりだ」と言ったら、こ
う言われました:「男は(息子も含めて)何もしゃべらない。
私が居ないと、しんとしてしまう。私がしゃべるお蔭で、家庭
が明るいのよ。」
 なるほどーーー、女は偉いものだと思いました。

2013/12/13 09:39:40


同ジャンルの他の作品

PR





上部へ