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作品名 スイカの話(1) 評価 評価(1)
タイトル スイカの話(1)
投稿者 比呂よし 投稿日 2013/11/15 11:49:00

(1)
 昭和二十六年頃だから、もう大分古い話になる。
子供の頃、神戸の須磨区の潮見台という処に住んで
いた。父親は公務員で、生活は余り豊かではなかっ
た。日本全体が豊かでなかった頃だから、ウチだけ
が特に貧乏だった訳ではないのだろうが、長男の私
を入れて四人の子供を抱えて、両親は大変だったら
しい。

 小学校四年生の頃だったと。両親を入て私達六人
の家に、もう一人親戚の叔父さんが間借りする事に
なった。母の弟でまだ独り身であった。叔父さんは
大阪寄りに近い西宮市の会社に勤めていた。二食付
きで間借りさせることによって、ウチは幾らかでも
家賃収入が入り、家計が助かったのだろう。

 叔父さんは2階の一間を貰って、毎晩8時頃勤め
から帰って来た。特に可愛がって貰ったり遊んでも
らった記憶は無いのだが、こうして叔父さんも家族
の一員として一緒に暮らしていた。

 夏の日曜日だったと思うが、叔父さんと話をして
いた。この時、叔父さんが毎晩最寄の国鉄(=現
JR)須磨駅で降りて帰宅の道すがら、スイカの切
り身をかじりながら帰るのを知って、私は驚嘆した。
大人の買い食いである。

 駅からウチまでは、キツネ坂という人通りが少な
くて寂しい、かなりきつい坂道を歩いて30分程も
掛かった。暑い夏の盛りであり、叔父さんは毎晩駅
前の八百屋か果物屋に立ち寄ったのだろう。そこで
切り売りの冷たいスイカの一切れを求めた。
 キツネ坂にさし掛かると、既に暗くなった坂道を
スイカをかじりながら歩いたのだ。

 叔父さんは、法外な贅沢をしていると私は思っ
た。今でも覚えている位だから、余ほど羨ましかっ
たに違いない。夏でもその頃、我が家ではスイカな
どそう頻繁には口に入らなかったからである。

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