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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (三百八十三) 

2023年08月09日 外部ブログ記事
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「奥さん、おくさん。ぼくが、わかりますか?」 その声に、小夜子の目が開く。上からのぞくようにして、医師がことばをかける。「大丈夫だからね。ぼくがついているから、大船にのった気でいなさい。でね、ぼくの言うとおりにしてくださいよ。『イキんでー』って言ったら、下っ腹に力を入れてよ。『休んでー』って言ったら、どうするかな? そう、力を抜くんだねえ。よくわかってるねえ、goodな妊婦さんだ。そうすればね、すこしでも楽なお産になるからね」 ときおり看護婦への指示をまぜながら、小夜子に声をかけつづける。小夜子の視界から医師が消えても、おかげで不安な気持ちにならずにすんだ。
「先生、まだ生まれないんですか? 陣痛、ずいぶんと前からはじまったんですけど。あ、来た来た、また来た。先生、イキムんですか? まだ早いですか?」 ちいさな声で、懇願するようにいう小夜子。次第に陣痛の間隔がせばまり、その痛みにあぶらあせをかいている。「そうだね、そうだよね。痛いよね、いたいよね。でもまだ、いきまないでね。いまね、赤ちゃんね、産道をとおるための準備をしているんだ。それはそれはせまい産道をとおるんだよ。ところが、赤ちゃんね、大きくなりすぎちゃったんだ。たくさん栄養を摂ったものねえ。旦那さんが用意してくれたんだよね。niceな旦那さんだね」 ときおり英語をまじえながら話しかける。洋行帰りをひけらかすプライドの高い産科の医師だった。看護婦の間では「下に見るいけ好かない医師」ではあるのだが、難産にも対応できる医師として名がとおっていた。武蔵に「腕のいい医者をたのむぞ」と言われた五平が見つけてきた医師だった。小夜子としては、勝子が最期をむかえた病院は避けたかったが、その医師がいるということで武蔵がおしとおしたのだ。
「でも、ちょっと摂りすぎちゃったんだよね。だから赤ちゃん、大きくなっちゃったんだよ。でも、大丈夫。奥さんなら、大丈夫だよ。そう、小夜子さんだ。小夜子さん、meが付いてるから。おっ、来たかい? いたいね、陣痛がきたね? よしよし、でもまだbadqだよ。いきんじゃだめだよ。もうすこし我慢してね。いたいかい? よしよし、それじゃね、先生の気をあげよう。気って、知ってるかい? 気持ちの気だよ。気力って、知ってるよね。小夜子さんは、物知りだから。中国のね、excellntなお坊さんがね、人間の気でもって、病をなおしてたんだ。こうやって手をかざしてね、やまいの原因をやっつけてたんだ。それと同じことをしてあげるから。大丈夫だよ。赤ちゃんには、害はないからね。
先生の気はね、赤ちゃんも元気にしちゃうんだよ。ねえ、赤ちゃんだって頑張ってるんだ。小夜子さんと同じように、痛い思いをしてるんだ。でも大丈夫、だいじょうぶだよ。先生の気はつよいから。よしよし、いいぞ! さあ、赤ちゃんが出てきたぞ。よしよし、イキんで! イキんで! はい、休んでえ。息を吸ってえ、吐いてえ。吸って吸って、吐いて吐いてえ。 うん、ご主人かい? 大丈夫、だいじょうふ。ろうかで待ってるよ。 『ガンバレ、ガンバレ!』って言ってるよ。先生には聞こえてるよ。よし、イキんで。はい、休んでえ」

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