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敏洋’s 昭和の恋物語り

[ブルーの住人] 蒼い情熱 〜ブルー・れいでい〜 

2023年05月28日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



(十四)Coca_Cola
 少年のボックスからは、その女の横顔がしっかりと見えた。少しからだを傾ければ、すがた全体が見えた。赤いミニスカートにグリーンのロングベストを身に着けている。おかっぱ風に前髪をそろえて、横髪でみみを隠している。クレオパトラを思わせる、髪型だ。際立った美人でもなく、愛くるしさにあふれているわけでもない。なんの変哲もない、ふつうの女だった。   その女の手を、少年の目がとらえる。すらりと伸びた細い指が、少年と同じくコーラを手にしていた。Coca_Colaという文字の入ったコップは、まさに少年が手にしているコップだった。大事そうに抱えるそのコップの文字が、少年の目にグングン迫ってくる。その服装にはとても似つかわぬコーラ、それが少年には妙に生なましく感じられた。
 異国の地で出会った同郷人に見えた。そしてコップを持つしぐさは、いつでもどこでも見かけるしぐさだ。なのにこの時この場におけるしぐさが、少年の胸をざわつかせる。原色の服とどうように、厚化粧に見える。きついアイシャドウに隠された瞳のかがやきが、少年にはまぶしい。鼻筋をたかく見せるための陰、ベージュ色に見える唇、なにもかもが少年の胸をたか鳴らせる。

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