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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 新(三百三十六) 

2023年04月11日 外部ブログ記事
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 その夜、五平と竹田・服部・山田の面々が、そろって社長室に集まった。直立不動の姿勢をとる三人組に、「そんなに固くなるな。ほら、すわれ」と、苦笑いの武蔵だ。「実はな、日の本商会ってのは、まえに夜逃げした店の娘が起ちあげた店だった。ほら、四人姉妹と末っ子の男を抱えた親父が、泣きついてきたじゃないか。覚えてないか?」
 みなが首をかしげる中、竹田がすっとんきょうな声を上げた。「あっ! あの、頭の禿げあがった、小太りの……。たしか、瀬田商店とか……」「瀬田商店かあ……。そういえば、子供をひき連れて。そうそう、土下座したんですよね」と、山田が思い出す。そしてみなが、「うん、うん」と頷きあう。「それだよ、それだ。その時の、娘さ。長女が、社長だ」「でも、社長。まだ二年ぐらい前じゃないですか? よくそれで、、、」「資金か? そんなもの、なんとでもなるさ。ま、女だからな」
 意味ありげににやつく武蔵にたいし、「女だからなって。社長、まさか……と、絶句する五平だった。「その、まさかさ。まあ、スネに傷持つ身の俺だ。敵なんてそこら中にいるからな。四人ばかりをパトロンにして、金を集めたらしい」「ううーむ。そこまでしますか、女の身で」。女の執念のおそろしさを知る五平からしてが、その覚悟のほどにはおどろくほかなかった。「仇討ちなんかじゃないぞ。表面的にはそう見えるだろうが、実際のところはちがうと思う。妹たちをも巻き込んだんだから。まあ、商売をしたかったんだろうよ。で、資金集めの口実に、俺を使ったんだろう。で、あわよくば富士商会も同じ目に合わせてやろうってことだろうよ」
 五平の推理とはちがうことを口にし、「あの長女は、父親を軽蔑してたからなあ。商売のやり方について、相当にかみついてたよ。仕入れ先を大事にしない店は、早晩立ちゆかなくなる、そんな信念をもってたよ」「しかし社長、いつ調べたんですか?」「調べたわけじゃないさ。情報が転がり込んできたんだのさ。山田の親父の所に寄った時に、聞かされたのさ。得意満面といった顔付きだったよ。なにせ、俺の知らない情報だったからな」
「山田商店さんですか。あそこは、創業以来の取引ですね」 服部が懐かしそうに言う。即座に、山田が言う。「立て看板を持ってた時に、いの一番に声をかけてくれたんだぜ。『兄ちゃん。なにを売ってくれるんだ?』って、な」「そうだ、そうだ。で、社長に言われたとおり、黙って歩いたんだよな。そしたら、ぶつぶつ言いながらもついて来てくれたんだ」「そう、そうなんだよ。でもつて、何人か引っ張ってくれて」 腕組みをしながら天井を見上げて、昔を懐かしむ表情をみせた。

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