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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (三百二十九) 

2023年03月08日 外部ブログ記事
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 焼きものに興味をいだいている父親が、とつぜんに割りこんできた。己の自慢ばなしのごとくに、有田焼の起源やらを東陶と話しはじめた。「明治以降なんですなあ、有田焼という名称がうまれたのは。江戸時代には、三川内焼、波佐見焼、鍋島焼などとともに、伊万里焼と呼ばれていました。秀吉の朝鮮出兵にさかのぼるんですよ。鍋島藩の藩祖である鍋島直茂が、朝鮮の陶工たちを日本に連れ帰ったんですなあ」 商売になるかと話にききいる武蔵だが、同好の士だと勘ちがいをして、ますます話に熱がはいってきた。
また始まったとばかりに、ほかの家人たちはそそくさとその場を立ち去っていく。「あまり遅くならないうちに帰りなさいよ」と祖母がいい、そして、老人が苦言を残していった。「甘やかしすぎだ、れいを」「大丈夫ですよ、お義父さん」と立ち上がって、父親が最敬礼をみせた。軍人上がりの祖父は、うん、とうなずきながら立ち去った。「むこ養子でしてね、わたし。ましかし、跡取りをつくたんだ。ある意味、お役御免ですわ。娘のれいが生まれたときは、散々でした。まるで種馬あつかいです、ひどいものです。でね、やっと隼人が生まれてくれたんで、大事にしてもらえるかと思いきや。どうしてどうして。『実家に帰りたくないか?』などと言われる始末ですよ」。
たばこを取り出して武蔵にすすめながら、「これもなんです。家の中では、吸わせてもらえんのです。義父が吸いませんのでね、外ですよ。まあね、義父が死んだらねえ。これみよがしに、そこら中で吸ってやろうと思っているのですが。だめですなあ、義母が許してはくれんでしょう」と、ぐちをこぼしはじめた。「で、義母がいなくなっても、こんどは妻がねえ。かかあ天下です、うちは。というより、この地では大半がそうなんですが。九州男児などといきがってはいますが、外ではそうなんですが、家に入るととたんに。まあしかし、その方が円満です。おたくはいかがです?」
 武蔵の嫌がるはなしに行きはじめたため「それはまあ、ご想像におまかせしますよ。どこに行きましたかね、ふたりは」と、小夜子と娘のふたりが気になるそぶりをみせた。「おおかた、あの野良犬をかまっているんでしょう。ほんとはねえ、飼ってもいいとおもうんですが」と、あくまでぐち話をつづけようとしてきた。「隼人のやつが、とんと意気地のないむすこでして。そのことも、わたしに対する……」「ああ、いましたいました。そうですなあ、犬と走ってますよ」と、はなしの腰をおった。“いつまでもくだらんはなしに付き合ってなんておられん”。口にはださないが思いっきり蔑視の視線をむけた。さすがに愚痴が過ぎたと気づいた父親も、「初対面の方にするはなしではなかった。つい同好の士だと気を許してしまいした。失礼しました」と、頭を下げた。
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