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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (三百二十七) 

2023年03月01日 外部ブログ記事
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「なんて女だ。自慢をするなんて、聞いたことがない」「まったくです、まったくです。男も男です。女の言いなりになっております」 聞こえよがしにささやきあう、男ふたり二人。隣にすわる女が、あわててわき腹をつついてる。「やめなさいって、あなた。ほら、あれっていれずみじゃないの? 二の腕のところに。命とかなんとか……」「そ、そんなことは……」汗で浮き出ている朱色の文字が、麦わら帽子とサングラスとに相まって、暴力団の風体をかもしだしていた。
「ハハハ、これですか?」 サングラスを外しシャツをまくりあげて「妻の名前です。流行っているんです、愛のあかしというわけですよ。どうです、あなたも」と、武蔵が声をかえした。小夜子に恥をかかせたくないという思いと、屈託のない娘によけいな警戒心をいだかせたくないと考えた武蔵だった。「あ、そりゃどうも。お前、すこしだまってろ」 明らかに男は、警戒している。老人もまた、視線があわぬようにと武蔵から目をそらした。「そうよ、そうよ。素敵じゃない、愛のあかしだなんて。なにも分からないのに、そういうこと言っちゃいけないわよ」 娘はなにやかやと小夜子と話しこんでいる。
「ねえ。お名前、なんて言うの? あたし、小夜子」「キャハハ、名前もしらずにおはなしてたなんて。あたしは、れいです。なんでも、零式戦闘機からつけたらしいんです。女の子ですよ、これでも。失礼しちゃうわ、ほんとに。だから、腹いせにね、男まさりになってやったんです。ね、ね、この腕見て。ほら、力こぶが凄いでしょ? 近所では、ガキ大将なの。でも、小夜子さんを見てたら、なんだか恥ずかしくなってきちゃった」「いくつなの?」「えっと、十三。中学一年生。小夜子さんは?」「ふふ…いくつに見える?」「うーんとね。十代じゃないだろうし、二十、と、ね、だめ、わかんないよ」
 目をクルクルとまわしながら、落ち着かないようすであたりを見まわしている。「どうしたの? だれか、さがしてるの?」「うん。お友だちがね、来てるはずなんだけどね。お父さんが居るとね、現れないの。怒られるものだから、いっつも木のかげにかくれてね、いるの。あっ、みいっけた。ほら、あそこに木が何本かあるでしょ? そのはじっこの、あの木の陰に隠れてる。あたしをみつけて、ほら、しっぽをふってるでしょ?」と、ふたりが宿泊している旅館のわきの樹木をゆびさした。

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