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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (三百十二) 

2023年01月25日 外部ブログ記事
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 その翌々日。あいにくの曇り空の下、晴れ晴れとした表情をみせる勝子と、誇らしげに目をかがかせる小夜子。そしてそんな二人を眩しげにみあげる、しかし不安げな目をなげかける母親がいた。「小夜子奥さま。ほんとに宜しいのですか? 社長さまのご了解をえていないというのに、お買いものをさせていただくなんて」「大丈夫ですって。武蔵にはあとで話しますから。あたしのやることに文句をいう武蔵じゃありませんから」「さあ、行きましょ。早く百貨店に行きましょ」 小夜子の手を引く勝子、お祭りに出かける幼子のようにはしゃいでいる。にぎられた勝子の手は、相変わらずに熱が感じられる。先日よりも高くなっている気もするが、勝子の体調は変わらずいい。はしゃぎ回るその様からは、とても病をかかえているとは思えないほどだ。しかしその気の高ぶりが、小夜子には気かがりだ。はしゃげばはしゃぐほどに、その後に来るであろうどか熱が恐ろしくもある。
“いまよ、現在を楽しませてあげなくちゃ”。“たのしい思い出をつくってあげなくちゃ”。“美味しいものを食べて、飲むのよ”。“案外に、病気がなおっちゃうかも”。 まるで根拠のないことなのに、“奇跡を呼び起こせるかもしれない”。“そうよ、そうなのよ。病は気から、というもの”。そんな思いがわいてきた。
「いいですか。すこしでも具合が悪くなったら、すぐに戻ってください。けっして、無理はしないように。退院は許可できませんが、一時外出ということにしましょう」「先生。具合が悪くなるなんてこと、ありませんよ。こんなすてきな一日なのよ、なるはずがないわ。神さまは、そんな意地悪じゃありませんて」。勝子が明るく言い放っては、医師も苦笑いをするだけだ。
「そうよ、そうよ。そんな意地悪な神さまだったら、わたしたちがひじ鉄砲しましょ。そうだわ、勝子さん。神さまにお礼の投げキッスをしなくちゃ。そうすれば意地悪されないわよ」 恥ずかしがる勝子を窓辺にひっぱり、二人そろって空に向かって「チュッ!」と、手を振った。これには母親もあきれかえ「すみません、まだ子どもでして」と、あっけにとられている医師に頭をさげた。「いやいや。あんがい効果があるかもしれませんよ。この美女ふたりの、キスですからねえ」 思いもかけぬ医師のことばに、母親もおどろいた。かたわらの看護婦も、思わずクスリと笑いをもらした。
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