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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜(三百一) 

2022年12月22日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



「いいの、いいのよ、勝子さん。竹田だって、そんな風には思ってないはずだから。そうでしょ、竹田? 見世物にするつもりじゃないんでしょ?」「もちろんです、もちろんです。そんな、、、」 小夜子から差し伸べられた救いの手に飛びつく竹田だった。しかし勝子の怒りは収まらない。竹田の言葉をさえぎって、叱り付ける。「思っていようと思っていまいと、結果はそういうことになるのよ。勝利、あんた分かってるの! 好奇の目で見られるのよ! 会社のみんなに言っておきなさい。姉の勝子が怒っていたって。いいわね、承知しないわよ、そんなこと」 中々に怒りの収まらぬ勝子で、その後もぶづぶつと一人憤慨しつづけた。
「まあまあ、勝子。その辺にしておきなさい。勝利も、もう少し考えることね。考えが足りなかったわね、確かに。姉さんの言うことの方が、まともだよ。さあさあ、いただきましょう。小夜子さまのお口に合いますかどうですか。ほんとの田舎料理でございますからねえ。料理人さんのような上品な味はできませんらね。でも、この煮物は自信作でございますよ。なにせ、一昼夜の間、ことことと火にかけておりましたからね。たくさんお召し上がりくださいな」大皿から小皿に盛られた里芋。しっかりと味が染み込んでいるのは、その色具合からも分かった。「おいしそうね。それじゃいただきまーす」
 大きく口を開けて小ぶりの里芋を食したとたん、大粒の涙をボロボロと流し始めた。「あれあれ、どうしました? 小夜子さまには辛かったですかね? 砂糖が足りませんでしたかね? お高いものだから、ケチり過ぎましたかね? 申し訳ないことでした」と、皿を下げにかかった。が、小夜子の手が、それを止めた。「違うの、そうじゃないの。お味で泣いたわけじゃないの。いえやっぱり、お味で泣いたの。でも、辛いからじゃないの。美味しいから泣いてしまったんです」 小夜子の意味不明の言葉に、一同顔を見合わせた。
「びっくりさせてしまったわね。あたしね、母の手料理を食べた記憶がないの。どころか、お乳すら飲ませてもらえなかったわ。母の病のせいなの。勝子さんにはお話したけれども、労咳をわずらってしまい、ずっと一人部屋だったの。あたし、母の傍に寄ることさえ許されなかったの。いつも障子越しでしか、廊下からでしか言葉を交わすことができなかったの。でね、お食事は祖父が用意してくれたりお隣からのおすそ分けしていただいたり。そうそう、たまにご本家から届けられたこともあったわね。といっても、お正月やらお盆やらの行事のある時だけだったけれども。ああそうそう、おひな祭りにお団子をいただいたのよ。美味しかったわ、あれは。母に届けたんだけど、食べてくれなかった」

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