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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (二百七十) 

2022年10月12日 外部ブログ記事
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「お花、お好きなのですか?」 じっと花に見入っていた武蔵に、ぬいが声をかける。「いや、それほどでも。美しい花がでしゃばることなく、ただそこにあるといった感じなのでね。見惚れてしまったんです。どちらかというと、、、」「どちらかというと、なんでございましょう? 分かりました、花より団子でございますね?」 武蔵の言葉を遮って、ぬいが言う。相変わらずにこやかにぬいが言う。
女将としては失点ものだ。しかし武蔵との言葉の掛け合いが楽しくてならないぬいだ。「外れです、女将。そりゃ料理も気になるが、ぼくが一番に気にするのは、何といっても女将です。顔ですからな、旅館の。女将が気持ち良い女かどうか、それを一番に見ます。そう、旅館の華ですよ」「あらまあ、怖いことを。で、あたくしは如何でしょう? 及第点はいただけますでしょうか?」
上目遣いで問い掛けるぬい。意識してか、無意識なのか。武蔵の心をざわつかせる。「ほぼ満点に近いですな。女将としては少々疑問符が付きますが、女として満点です。気持ち良くさせてくれる。大事なことです、これは。女将としては満点でも、人間がギスギスしていては大減点です」
「失礼だが、少々改修が必要なようだ。造りは良いのだから、少し手を入れるだけでずっと良くなる。庭なんか、実に見事じゃないですか。キチンと手入れがなされている。山水画風の佇まいは、中々のものだ。詳しくはないけれども、僕は好きです、この庭が。そして気持ちがこもった接客をつづけていけば、大丈夫! 大繁盛間違いなしですよ」
 窓から庭を見ながら、満足気に頷く武蔵だ。「お恥ずかしゅうございます。」 何が恥ずかしいのか? と、小首を傾げる武蔵に「主人が石集めが好きでして。ただゴロゴロと転がっているだけでしたのですが、たまたま寄り合いでお出でになった庭師さんと、主人が意気投合いたしましたので。社長さまにも、お気に入って頂けましたでしょうか」
「ところで女将。露天風呂は、ぼくの貸切りみたいなものですね?」「左様でございます、ごゆっくりお入りください」「女将と一緒できたら、一生の思い出になると思うんだけれども。どうにも男と言う者は仕方がない。きれいな花を見ると、つい手にとってみたくなる」 女将の顔をうかがいつつ、探りを入れてみた。「まあまあ、嬉しくなることを仰られて。あたくしも社長さまと、湯船で差しつ差さされつとまいりたいもので。ご酒はお強いのでしょ? あたくし下戸なくせに、大好きでございまして。酔いましたら、介抱してして頂けますでしょうか?」と、色香たっぷりに。ぬいが。
「もちろんです、女将。とことん介抱させてもらいます。しかし女将、そんなことを言いつつも、案外底なしのうわばみじゃないのかな? 東北人が下戸だと言っても、とてものことに信じられないことだからね。まあいい、それは今夜分かることだし」「あらあら、社長さま。今日の今夜というわけにはまいりませんわ。あたくしも一応は、女の端くれでございます。物事には順序と言うものがございますわ。それに、心の準備もいたしませんと。ということで、次回のお泊り時にでも。その折を心待ちにしております」 やんわりと断る様は、実に堂に行ったものだ。

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