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敏洋’s 昭和の恋物語り

恨みます(十一) 

2022年05月30日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



 思いも寄らぬ一樹の出現は、どう解釈すべきかと、小百合を混乱の極地におとしいれた。“どういうことなの、なんで一樹さんが居たわけ?”“あたしのこと、見張ってたの? うそ、うそ。そんなこと、あるわけないわ” タクシーに乗り込んだ小百合は、激しい動悸にさいなまれた。一樹の腕の中に、しっかりと抱かれているのだ。シトラスの香が、小百合の鼻腔を刺激した。エレベーター内での煙草と体臭の入り交じった臭いではなく、柑橘類の爽やかな涼風が、小百合を包んだ。もう一度会いたいとは、思った。お礼をする為に会わなくちゃ、と考えた。しかしまさか、それが今日だとは。信じがたいことだった。
「かかりつけの医者は、います?」 一樹の吐息が耳を攻める。しかし小百合には記号のように感じられて、意味不明だった。体がふわふわと宙に浮き、鼓動がさらに激しくなっていく。「病院、どこでもいいですか?」 一樹の顔が、小百合におおいかぶさる。真っ白い歯が眼前にある。「小百合さん、小百合さん」 激しく体を揺すられた。「えっ! な、なんでしょうか?」
「病院に行きますよ。いいですね?」「ビョーイン? ビョーインって、なに?」「運転手さん、一番近い病院に行っ、、、」「行きません、行きません、あたし」 やっと正気を取り戻した小百合は、一樹の腕から体を起こした。「ごめんなさい。また、ご迷惑をかけてしまって」
「いいんです、そんなこと。それより、病院に行かなくていいんですか?」「大丈夫です、ほんとに。アパートに戻れば、静かに休めば落ち着きますから」 乱れた髪を直しながら、何度も頭を下げた。「じゃあ、そうしましょう。運転手さん、病院はやめます」「ご迷惑ばかり、おかけして。……そうだ。こんど、お礼をさせてください」「いや、いいですよ。そんな、気にしないでください」 一樹に肩を抱かたままの体勢が、心地よくはあるが恥ずかしさもまたある。体を起こそうとするが、そのたびに「大丈夫、大丈夫」と、一樹が離すことはなかった。
電車でと考えもしたが「また襲われたらどうするの」という一樹のことばで、このままアパートまでとなった。タクシー代が気になりはしたが、今の精神状態を思うとやむを得ない出費だと思うことにした。それよりも、一樹のことが気になりだした。ここまで親切にしてくれるのはなぜ? という疑問が消えない。何か良からぬ企みがありはしないかと、不安に思う心が消えない。といって途中で下ろすわけにもいかない。どうしたものかと思案している小百合に対し、心を見透かすかのごとくに一樹が話し始めた。
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