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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (二百二十三) 

2022年04月21日 外部ブログ記事
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茂作にそしられた正三、小夜子に絶縁を宣告された正三だが、しかし落ち込んでいる暇はない。省内の廊下を歩く折には、必ず五三会の面々が後ろにつづいている。「佐伯さん、佐伯さん」 いつものように背筋を伸ばして前を向き、すれ違う省内の者に対して慇懃な挨拶を返す正三を呼ぶ者がいる。「誰だ、あれは?」「M無線じゃないか? テレビジョン製造問題で、通産が揺れてるらしいじゃないか」 大柄な体を小さくしてもみ手をしながら、男が正三に近づいてきた。深々とお辞儀をしてから「今晩、お時間を頂けませんか? ちょっと趣向を変えて、キャバレーなどいかがです?」 と、にやけ顔でお伺いを立てた。 「M無線さん。何だよ、そりゃ。そんな下世話な所に、坊ちゃんを連れて行くって言うのかい?」と、山田が言う。しかし「いや、案外面白いかもな? ドレス姿の女給というのも、いいじゃないか」とは、坂井の弁だ。「そうですよ。たまには毛色の違った遊びをしましょうよ。ちらりちらりと、見えそうで見えないというのも良いものです」 何とか正三の興味を引こうとするM無線に対して「ぼくに何の用です? お宅に図れる便宜はないですよ」と、連れない返事をする正三だ。「そうそう、テレビジョン製造は我々の管轄外だからね。通産に行かなきゃ」「いじめないでくださいよ。お願いしますよ、ほんとに。他意はないんですから。日々の疲れを取って頂きたいだけなんですから」「とに角、今夜はだめです。」と、にべもない。「アポイントを入れなきゃ、坊ちゃんは忙しいんだ。今夜は、先約が入ってるし」快活に笑いながら部屋の中に消えていった。「ところで、坊ちゃん。面接は済みましたか?」「誰の?」「誰のって、坊ちゃんのですよ。東京大学法学部ですよ」 入省したての頃の正三ならば、仮にも先輩である五三会の面々にこんな横柄な口の利き方はしなかった。しかし今は、一段見下ろしての言葉遣いになっている。「ああ、あれね。先月済んでる、入学許可証も届いているよ。まあ、籍を置くだけのことだし。然も、二年間だけね。ぼくも地方と言えど、大学は卒業しているんだからね」「ですよね、当然さ。坊ちゃんが一時的にせよ、逓信省から離れるなんて、考えられないよ。なにしろ、電波行政のエキスパートなんだから」「そうだ、そうだよ。二三年もすれば、係長だ。そして最年少の課長職、という道があるんだから。しかし坊ちゃん、偉くなったからって、我々を忘れないでくださいよ」「さあ、みんな。仕事、仕事!」と、大声が響いた。「おお、恐! 課長が怒ってるよ、また。席に付こうっと」

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