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敏洋’s 昭和の恋物語り
水たまりの中の青空 (去れば、去るとき、:二)
2021年06月02日
テーマ:テーマ無し
大女将からのご返事のこと、お伝えしていませんでしたね。
ありがたいお言葉をいただきました。
「あなたの性根が気に入っての若女将なの。
決して清二の子どもを身籠もってしまったから、ということではありません。
もしそうならば清二の嫁として、清二と共にたたき出しています。
しっかりと修行をしてきなさい」。
「明水館を出たのは、若女将修行の一環だと、皆には話してありますからね」。
「本音を言うと、早く帰ってきて欲しいの。あたくしも寄る年波には勝てません。
でもあなたの気が済まぬと言うのなら、1年の修行を終えて帰ったということにしましょう。
いですか! 戻るからには、立派な、若女将ではなく女将として戻ってらっしゃい」。
更には、今お世話になっております瑞祥苑の女将さん宛にも、
「うちの大事な若女将でございます。しっかりと躾をお願いいたします」と、そんなお手紙も添えられてあったのです。
なんという慈悲深いお言葉でしょうか。
その手紙を胸に抱いて、一晩中泣き明かしたものでございます。
それにしましても、厳しいご指導でございました。
明水館でのそれとは違い、口頭での注意やら小言などは一切ございませんでした。
元々が寡黙なお方らしく、他の仲居さんたちに聞きましても、大声を上げられることもなく小声で囁かれる程度だと聞かされました。
但し、見込みがない、二度同じ間違いを犯せば、即追い出されるとか。
「恐い方よ」と、皆さんが仰います。
ですので館内は静かで、遠くの小鳥のさえずりや木々の間を抜ける風の音、果ては湖水ではねる魚の水音すら聞こえることがあると仰るのです。
さすがに夜ともなりますとその静けさは、ある意味不気味でございます。
そこで館内の奥まった部屋で、お琴が弾かれています。
それが館内中に届き、のどかな雰囲気を醸し出しております。
まあ山中にある旅館でございますし、街中の喧噪から逃れるためにおいでになるお客さまにとりましては、ある意味桃源郷なのかもしれません。
そうでございますね。ここにおいでになるお客さまといえば、いわゆる文化人、知識人、文人、
そしてあまり好きな言葉ではございませんが、高等遊民といった方々が多い気が致します。
といいますより、いわゆる一般のお客さまは皆無と言ってもよろしいかもしれません。
そうそう、ご指導でございます。厳しいと申しましたが、ある意味では楽でございます。
それなりにこなしていければ、なんのお咎めもございませんし、お暇を取らされることもございませんから。
わたくしとしましても、三水閣で染みついた匂いといったものを落とすためのことでございます。
もちろん、他に得ることがあれば明水館に持ち帰りたいとは思いますが。
ですが、何か落ち着きません。
あまりにゆったりとした時間が過ぎる中で、じりじりとわたくしを責め立てるものがございます。
それがなんのか、当初はまったく気がつきませんでした。
ある日のことでございます。
玄関口に置いてある大鏡(なんのための設置なのか、単なる衣装の確認のためかと思っておりましたが)に、女将の目を見たのでございます。
いつものように穏やかな笑みを浮かべておいででした。
が、わたくしの、お客さまをお部屋に案内する際にとった仕種に、一瞬でしたが曇る視線を感じたのでございます。
わたくしの勘違いだと思えばそうかもと思えることでございましたが、なにかしら苛つかれたような咎めるような、そんな視線が足下に注がれたように感じました。
慌てて足下に目をやりますと、お客さまに対して挑むように足先が向いていたのでございます。
なんという粗相を、と、ただただ恥じ入るばかりでございます。
そのことがありましてから、女将の視線が気になるようになりました。
どこに居てもなにをしている時でも、常に女将の視線を感じるようになりました。
そういえば、わたくしの先々に女将がおられたように思います。
たとえばわたくしがお客さまのお迎えをする時に限りまして、女将が傍に立たれたような気がします。
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