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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第一部〜 (三十七) 

2020年11月25日 外部ブログ記事
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 外人からの言葉に対して、坂田が中々納得せずにいるようだ。
次第に外人の声が荒くなり、坂田に詰め寄る風に見えた。
女性通訳と坂田との会話はステージの袖でのことで、小夜子には聞こえない。
突然坂田が小夜子を手招きした。
不安な思いで立ち上がった小夜子に、外人が手でその場に居るようにとでも言うように、手を下に向けている。
“何よ、何なのよ。こっちに来いだの、座れだの”

 怪訝な面持ちをしている小夜子に、またしても神経を逆撫でする声が聞こえた。
「スランラップ(stand up)!」
 しかし小夜子の耳には、罵声にしか聞こえなかった。
“なによ、日本語で言ってよね。アメリカ人だからって、威張らないでよね”
「スランラップ! オノデステキ(on the stage)!」
“なによ、このアメリカ人。何言ってるのよ。いい加減にしてよね。怒るわよ、温厚なあたしでも”

「へェイ(Hey)!」“まっ、失礼な。どういうつもり、一体。おならだなんて! もう我慢の緒が切れたわ”
 まさに怒髪天をつく勢いで、スックと立ち上がった。
「オオ、ブラボー!」と、手を叩きながら、その巨体が小夜子に歩み寄ってくる。
“な、なに。あたしは怒っているんですからね。少しの拍手位じゃだめ……って、なにを……”
 小夜子を軽々と抱えあげて、ステージ上に降ろした。
椅子に座ったデザイナーは、小夜子を見上げるなり、「ファンタスティック!」と、手を叩いた。

“なあに、このアメリカ人は。あたしを褒めてるの?”
 女性通訳相手に、早口で何かまくし立てている。興奮していることは、小夜子にもすぐに分かった。
「デザイナーのマッケンジーさん曰くに、あなたが気に入ったからショーに出て欲しい、と言ってる」と、やっと坂田が説明に来た。
どうやら、話がついたようだ。
「 ショーって、このファッションショーのことですか?」
「そう、まったくの異例なんだよ。じゃ、頼んだから」と、横柄に告げて立ち去った。

「ち、ちょっと待ってよ。あたし、やるとは言ってないでしょ」
「まあまあ、小夜子さん。いいじゃないですか、おやりなさいな。
こんな経験は、滅多に出来るものじゃありませんし」と、正三が声をかけた。
「正三さん、どこに行ってたの! 大変だったんだから」
 詰る小夜子に、
「ごめん、ごめん。お弁当をね、買ってきました。サンドイッチとか言うものをね、買ってきたんですよ」と、差し出した。

「肝心なときにいないんだから」と不満を口にしつつも、その奇妙な形をしたものに興味を覚えた。
三角形に切られた食パンに野菜やら卵焼きがはさみ込まれたもので、初めて見るものだ。
ふみ子も食べていないものだと知ると、急にお腹が空いてきた。
すぐにも椅子に座って食したいと思うのだが、
「ごめんなさいね。世の男どもときたら、女は男の従属物だと思ってるのよね」と、にこやかに女性通訳が小夜子に声をかけてきた。

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