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敏洋’s 昭和の恋物語り
ツバメの旅 どうわ集 第四章 噴水のある公園で
2020年04月21日
テーマ:テーマ無し
わたしは、さびしいきもちでカラリとはれわたったそらをとんでいました。
しかし、はねはおもたくおもうとおりにはうごきません。
なぜかこきゅうもくるしく、ちょうじかんのそらはくつうです。
わたしのこきょうでは、いちにちぢゅうそらにいても今ほどのくつうはかんじません。
このちのくうきのよごれのせいもあるでしょう。
しかしそれいじょうに、さきのあのことがわたしのはねをおもたくしているのだとおもいます。
のぞんではならないことをのぞんだわたしがまちがっていたのかもしれません。
でもそんなとき、ほんとうにかみさまはよいおかたです。
そんなくるしみのなかのわたしに、またあたらしいよろこびをあたえてくださいました。
たかくふきあがるみずが、四ほうこうにわれています。
そしてそのまわりには、ひくくふきあがるみずが八ほうこうにわれています。
ふきあがってはやすみ、そしてまたふきあがります。
まわりでは、ちいさいお子たちが「キャッキャッ」と、はしゃぎまわっています。
そのふんすいからすこしはなれたばしょに、おおきな木がありました。
その木のえだでつかれたはねをやすめていると、よにもうつくしくきよらかなこいのささやきをききました。
ベンチのはしにこしかけて、ひとりのせいねんがほんをよんでいます。
そしてまたひとりのしょうじょが、おなじようにそのベンチのはんたいのはじっこでほんをよんでいます。
ふんすいのみずは、まばゆいほどのおひさまのひかりをはんしゃしています。
ふんすいのみずは、ちからいっぱいせのびしています。
ふたりのまわりでは、もうつめたいかぜはありません。
でも、ふたりはひとこともくちをききません。
ただただ、ほんをよんでいます。
うれいをひめた目がかなしげです。
またときには、きらきらと目がかがやきます。
ひあたりのよいえんがわにおじいさんとふたりすわり、にわにさいたおはなをみているおばあさんーそんなうつくしいこうけいをみたように、うれしげです。
でもふたりは、けっしておたがいの目をみようとはしません。
でも、わたしにはよーくわかっているのです。
どんなにふたりがあいてのことをきにしているのか。
ときおり、チラリチラリとぬすみ見をしてはまたあんしんしてよみふけっている、わかっているのです。
そうなんです、いろいろとあいてのことをそうぞうしているのでしょう。
ああ、なんとうつくしいことか。
むかしには、ふるきよきじだいにはうたをよみあってじぶんのこころをつたえあったとききます。
そのもどかしさ、じれったさ、すばらしきかな。
いま、かたおもいいなのだとおもいこんでいるふたり。
あわいきたいをいだいたり、ぜつぼうのふちにおいやられたり、あいてのかおいろをうかがいつつもしせんをあわせようとしないふたり。
たにぞこで大きなくちをあけてまっている、おそろしいあくまにもさぞかしじれったいことでしょう。さあ、てをとるのですよ、さあ、こえをかけてください。
それですべてうまくいく。
さあ、はやく。
ところが、そんなわたしのこえにきがつかず、せいねんはほんをとじてたちあがると、ふんすいのまわりをあるきはじめました。
そのうしろすがたはいかにもさむそうです。
そこのむすめさん、さあはやくいっておやりなさい。
あのせいねんはあなたをまっています。
あなただってさむいでしょうに。
せいねんがふんすいをはんしゅうしたとき、ようやくしょうじょはこしをあげました。
そお、とうとうけっしんしたのでしょう。
おや、あのせいねんもこちらをみました。
せいねんもけっしんしたのでしょう。
はやあしであるいてきます。
しょうじょもあるいていきます。
おたがいに、まんめんのえみをうかべています。
あと、10・8メートル・・・3・2・1メートル、さあてをとって。
あっ、ふたりはすれちがいました。
どうしたの? いったい。
かみさまのなんといじわるなことか。
いまになってせいねんのあそびなかまをこさせ、そしてしょうじょのどうきゅうせいたちをおよびになったのです。
ふたりは、それぞれおたがいのわにとけこみました。
しかしわたしはしっています。
あのときふたりは、おたがいのてをなぎるつもりだったのです。
きっとそうです。
さようなら、さようなら、でもたのしかった。
きもちのよいじかんでした。
わたしははればれとしたきもちで、また、さむいかぜのふくそらへととびたちました。
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