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高松市へ行った日 

2019年10月10日 ナビトモブログ記事
テーマ:思い出すままに

歩いているときは、大体音楽を聴くことが多い。

小型のICレコーダーには、様々な音楽が収められている。

自分の練習もあれば、サンプル的なピアニストのCDをダビングしたものもある。

山本剛トリオの「ミスティ」もあるし、キリ・テ・カナワの歌う、ラフマニノフの「ボカリーズ」もある。

吉本隆明氏の古い講演も入っていれば、好きな番組のテーマ音楽などもある。

最近、キムタクの出演した古いドラマ「空から降る一億の星」を久しぶりに聴いて、私は、録音した時の数年前にまるでワープしたような感覚を味わった。

これは、主人の出張について、高松市に出かけた際、毎日の様に繰り返し見ていたこのドラマの音楽を録音したのだった。


旅行先ではいつも、主人が会議へと出かけた後、私はホテルで貰った簡単な地図を片手に、街へと繰り出す。

初めて見る高松市は、幅の広い大きな道が整然と並んでいて、何の予備知識も無かったけれど、空襲にあったのだろうかと想像した。


今になると、余り細々とは記憶に残っていないけれど、ICレコーダーの音楽にどっぷりと浸って歩いていた自分は、はっきりと蘇ってくる。

音楽とは、不思議な媒体である。

耳にすると瞬時に、理屈も永いブランクも越えて、たちまちその当時へと瞬間移動する事ができるのだから。


地図を見ると、街を案内する会館があった。

季節はずれだったのだろうか、見物客は私一人しかいなかった。

簡単な歴史を読んでいくと、やはり終戦直前に大きな爆撃を受けたらしい。

軍需工場でもあったのかも知れない・・。


中には、壺井栄原作の「二十四の瞳」を模した、小学校の教室があった。

迂闊なことに、小豆島の名は子供の頃から知っていたけれど、それまで高松市と同じ香川県だとは知らなかった。

教壇の横に、大石先生が弾いていた小さなオルガンがあった。

私が小学生の頃、担任の男の先生が理科担当だったので、音楽の時間はいつも「先生の代わりに、お前弾け」と言われたのを、久々に思い出した。

教室にあるのは、勿論小さな足踏みオルガンだった。


翌日は、主人が午後は空いているというので、金比羅様へ行ってみた。

金比羅鉄道、と言った風な名前の電車で、小さな駅に一つ一つ止まりながら、1時間ほど乗っていただろうか・・。

金比羅様に関する予備知識も無かったのだけれど、まずは歌舞伎ファンにとって、最近大きなブームになっている芝居小屋を覗いてみた。

私の様に正座の出来ない者は、古い小屋は馴染めないないなぁ、と思ったのだが。

案内の人からは、メディアに持ち上げられている人特有の、不遜さが感じられた事など、やけにはっきりと思い出す。


階段の続く金比羅様へ行くのは、簡単にリタイヤして、憶えてきた高松行きの電車の時間に合わせて、駅へ向かった。

大分終点に近づいた処で、主人の体調が悪くなって、一旦下車したのだが、暫く休んでいたら、本数の少ない次の電車には目出度く乗ることができた。

私達の様子を眺めていた駅員さんは、乗車時に再度切符を求めることなく、黙って改札口を通してくれた。

心細く思って居たときだったので、その心づかいがとても嬉しかったのを思い出す。


久しぶりに聴いた音楽が届けてくれた、記憶の贈りものである。



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