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敏洋’s 昭和の恋物語り

えそらごと (十四) 

2018年09月11日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



 昨夜のことだ。
ひと月以上も前に別れを切り出された相手から「やり直そうか」と、貴子に電話が入った。
なによ今さらと答えつつも、未練の気持ちがある貴子に異はない。
「あの娘(こ)は連れてくるなよな」と詰問調に言われると、心内ではそうよねと納得しているのに
「わたしの妹なのよ」
と反発してしまう。

キスもできないじゃないかと反駁されると、黙らざるを得なかった。
激しい口論の末に、悲しみとも怒りともつかぬ思いが貴子の中に充満した。
その思いが彼に向けられたものなのか己に向けられたものか、それすら分からぬままの朝を迎えた貴子だった。

 とにかく少し考えてみるからと電話を切ったものの、真理子を一人にするわけにはいかないと考えてしまう。
前の職場で受けた傷がまだ癒えていないのだ。
二十代後半ばかりの女性社員の中にただ一人、十五歳の地方出身者の、初々しさいっぱいの少女が入った。
男どもにちやほやされていい気なものよねと、妬(ねた)みの対象になってしまった。
小さなミスを針小棒大にあげつらわれてトイレに駆け込む真理子だったが、甘えるんじゃないわよとしつこく追いかける女子社員すらいた。

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