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独りディナー
遅まきながら、キルト展
2017年11月13日
テーマ:ナビ友さんとの呑み会
もう、一週間も過ぎてしまったけれど・・。
ナビ仲間の方が出品してらっしゃる、「キルト展」に行った。
キルトと言う言葉は、多分「赤毛のアン」の小説で、最初に知ったのだと思う。
アメリカやカナダの田舎町では、夫人達が一緒にキルトを制作するというのが、一つの社交の場であったらしい。
小説とは、解説文では無いので、婦人会でのキルト、といえば現地の読者には、それだけで様子が伝わるのだろう。
でも、私の様に遠い異国で翻訳書を読む者には、よくわからない場面も多かった。
「コンサート」というのが朗読会だったり、「ピクニック」というのが野外パーティだったり、子供時代に読んだはるかかなたの小説は、詳細がわからない故に一層、非現実的で楽しかったものだ。
噂話に夢中になって、時折手が止まってしまう、といったキルトの婦人会も、子供なりに色々想像したものだった。
でも、キルトそのものにまでは、手作業の苦手な私の、想像は及ばなかった・・。
多分、Reiさんとの繋がりが無かったら、これからもキルトに関心を持つことは無かっただろう。
今回、私の上京時と、Reiさんの展示会の開催時が、幸運にも重なった。
Reiさんの、キルトは一昨年だったか、このナビのギャラリーで拝見していた。
「シャンパン・フラッシュ」というタイトルで、エッフェル塔をとても面白い角度から眺めた構図の、魅力的な作品であった。
今回は、初対面の吾喰楽さんと、師匠とお呼びしているパトラッシュさんのお二人と待ち合わせて、池袋の会場へ行った。
開場時間に伺ったので、すぐReiさんが出ていらして、横で色々説明してくださった。
最初に、この会を主催してらっしゃる先生の作品が、目に飛び込んできた。
茶色の濃淡が重ね合わされて、スペインのアルハンブラで見た様な、アラベスクの世界観が、伝わって来た。
もしかしたら「アラベスク」という言葉は、Reiさんが「今年のテーマは、アラビック、なんです」と仰るのを聞いて、私の中で後から整理されたものかも知れない。
アラベスク、という言葉には私は思い入れがある。
その名をタイトルにしたピアノ曲で、有名なドビュッシーの小品があって、音楽事典で意味を調べると、其処には「唐草模様」と説明されていた。
昭和30年代の話である。
著者も、本物のアラベスクは見たことが無かったのかも知れない。
当時の私は「唐草模様」というと、漫画に出てくる泥棒が盗んだ品を包む、緑の大風呂敷の模様、くらいしか思い浮かばず、それは長年の謎であった。
長じて、スペイン旅行をした際に、初めてアラベスクなるものを目にして、文字通り感動したのだった。
その立体感からくる、壮大な存在感に。
今回のキルト展で、最初に拝見したその作品を見ながら、私は、布で立体感を出すという効果に、驚いたのだった。
作品は20作、或いは30作くらいあっただろうか。
私は通常、美術展では順番に見ることはしない。
少し遠くからざっと全体を眺めて、そこで印象に残った数点に集中して、その前に暫く立ち止まる、というのが何時の頃からか習慣になっている。
暫くすると、Reiさんの作品が現れた。
奥の壁の中心に、その作品はあった。
印象は、アブストラクトだ。
暖色系の茶色と、寒色系の青が、それぞれ対立するかのように、主張している様に見えた。
寒色系が、ちょっと控えめである。
私は、彩色に気が引かれるので、暫くその前で色を眺めていた。
その時は、布を縫い合わせるという、技術的なことは全く忘れて、絵を見ている感覚であった。
控えめな筈の青の色が、強く訴えてくる気がしていた。
そのときReiさんが横にいらして、説明してくださった。
主に技術的なことを、仰ったので、私は、キルト展だった事に改めて気づかされた思いだった。
他の方の、青系統でまとめてある作品を説明してくださった時に、「まるで、光っているように見えますでしょう、あれは、細かい色合いの、配色が見事だからです」といったニュアンスのことを仰った。
その時、遠い昔に読んだ、和辻哲郎の「故国の妻へ」という本を思いだした。
彼が若い頃、一人で外遊をして、イタリアの美術館でみた肖像画について、夫人に書いた手紙の一節だ。
少し離れてみると、貴婦人が身を飾っている宝石の、光沢であるように見えるのが、側でみると宝石の色の上に、一筆白を重ねて居るだけなのだ、といった内容だったと思う。
現在ならば、情報も溢れているから、「何を今更」という事かも知れないが、和辻哲郎ほどの人も、初めて本物を見て知り得た、絵画の技術だったのだろう。
私は、Reiさんの説明を聞いて、もう一度最初から作品を見直してみた。
キルトの作品として、どんな風に重ねて縫われているのか、と思いながら・・。
最初のアラベスク作品に戻ると、語りかけてくるものが又、違う気がした。
ちょっと、一歩作品に近づけた気がした。
私は、前回のReiさんの作品、「シャンパン・フラッシュ」の作品を、写真でしか見られなかったのが、本当に残念であった。
今回の展示会では、全体として抽象的なデザインの作品の方が、面白かった。
具体的な作品は、何となく何処かで見た様な思いにとらわれるからかも知れない。
その点、Reiさんの前作は、エッフェル塔でありながら、まるで初めて見る様な構図で描かれていて、そのオリジナリティに改めて気づかされた思いだった。
そして、それからReiさんも同行されて、ナビ仲間の待つレストランへと向かった。
続く
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Reiさん
お陰様で、良い時間を過ごすことが出来ました。
基本的に、美術館へ足を運ぶのは、とても好きです。
でも、大半は絵画か彫刻で、キルトには目が向きませんでした。
新しい世界へ、誘って下さってありがとうございました。
2017/11/13 17:03:31
師匠、の名は不滅です
同じ展覧会へ行って、それぞれの印象を述べ合う、って楽しいですね。
やはり文章で書くのが良いかも知れません。
あの後は、取り立てて感想的なお話はしませんでしたものね。
私は特に、口では失言が多々あって、災いの基になるので、なるべく書いて伝えたいです。
かつては、手紙でしたけれど、メールは悪筆がばれないので、とても嬉しい存在です。
2017/11/13 17:00:49
吾喰楽さん
コメント、ありがとうございました。
「シャンパン・フラッシュ」見たかったです。
ゴクさんの、印象に残った作品は、何となく程度に、記憶には残っていますが、やはりそれぞれの受け取り方ですね。
最初に大雑把に眺めると、うっかり見過ごしてしまう事が、当然あります。
それぞれの、鑑賞の仕方ですね。
2017/11/13 16:49:29
ありがとうございます
キルト展のことを、詳細にかいていただきました。
細やかな表現が、いつもながらステキです。
自分たちにとっては、毎年のことで、慣れてしまっているのですが、初めて見られた方には、新鮮に見えるでしょう。
一つひとつの作品を丁寧に見ていただいたこと、感謝しています(*^^*)
2017/11/13 11:59:07
私は「支障」が専らでありまして
「キルト展だったことを忘れ……」
その通り、私もまた、同じ感慨に至りました。
優れた芸術というのは、ジャンルの垣根を低くする。
遂には、些末な分類など、失わしめてしまう。
一つの例かもしれません。
シシーマニアさんは、Reiさんの作品を、そして展覧会全体を、
よく観察なさっておられる。
そこに深い考察があるからでしょう、この一文が、単なるレポートの域を越え、
読者をして、キルトの世界へといざなわしめる、楽しい読み物となっております。
満を持して、お書きになった甲斐がありました。
貴女を師匠と呼ぶべきは、私の方かもしれません。
2017/11/13 09:05:29
キルト展
おはようございます。
ブログを拝見していて、キルト展の様子が、思い出されました。
Reiさんの「シャンパン・フラッシュ」、よく覚えています。
翌年は、タイトルは忘れましたが、「紫陽花」でした。
今回、私が印象に残ったのは、入口に近い左側にあった、「木立」(?)です。
光芒が何とも云えませんでした。
キルトは、正に絵画です。
油絵は油彩絵具で描く、水墨画は墨で描く、キルトは布で描く、要は表現する画材が異なるだけです。
2017/11/13 07:24:24