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最後の秘境 

2016年10月26日 ナビトモブログ記事
テーマ:読書

最後の秘境「東京藝大」を読んだ。

副タイトルが良い。

〜天才達のカオスな日常〜


何だかよくわからないけれど、ちょっと覗いて見たい気がするではないか。


大体昔から、天才には「カオス」という言葉が似合うし・・。


50年前には、自分も藝大生ではあったけれど、この本の内容は殆ど知らないことばかりであった。


それはきっと、時代が変わったと言うよりは、この本には主に、美術学部の様子が生き生きと描かれているからだと思う。

つまり、著者の奥さんは、美術学部(美校と呼ぶらしい)の、現役の学生さんだったのだ。


私は、音楽学部の中心とも言えるピアノ科に在籍していたから、美術学部は違う大学のような感覚であった。

本にも書かれているとおり、美術と音楽は、キャンパスが道を挟んで向かい合っているから、余り交流は無かったのだ。


私の場合は、体育の実技の時間だけは、美術のキャンパスで受けた位だ。

後は、図書館と、学食に行くくらい。

学食も、音楽学部は「キャッスル」という名前が示すとおり、洋風であった。

一方、美術の「大浦食堂」は、いかにも庶民的な定食屋の雰囲気だった。


当時の私は、友達とつるむのが好きでは無かったから、美術学部に友人はできなかった。



音楽は、個人レッスンがメインだから、教師と学生はマンツーマンで、学ぶことができる。


これは素晴らしい経験である。

藝大は、名教師揃いだから、20才そこそこの若者達が身近で、そういった演奏家に接することができるのは、一番の恩恵のように私は思う。


特にピアノ科は、他の科の学生に伴奏を頼まれるので、伴奏者としてピアノ以外の名演奏家のレッスンも、一緒に受講できるという、この特権も得がたいものだった。


私は、フルートやヴァイオリン声楽などの先生から、どれ程学ばせて戴いたか、はかり知れない。


ピアノ科の学生は基本的に一人で学ぶものだから、2年生までの一般教養の単位を取った後は、もうレッスン位しか大学には行く必要がなくなる。

他の科は、合唱だとかオーケストラだとか、一緒に学ぶ教科があるけれども、ピアノは各自が練習するばかりである。


4年生位になると、週に一度のレッスンの為に大学へ行くと、レッスン日の共通しているクラスメイトに、道でばったり行き交ったりする。


「あらぁ、お久しぶり。元気だった?」
これが、在学中のクラスメイトと交わす言葉なのだ。


きっと、この本にピアノ科の生徒の話が殆ど出てこなかったのは、キャンパス内で出会う機会が、余りなかったのでは、と思う。


藝大に入りたての学生達には、自分は天才かも知れない、と思っているらしい人が結構居た。


特に、作曲科、そして道の向こうの美術学部には、そんな様子の人達が闊歩していた様に思う。


ピアノ科の学生は、入学する何年も前から藝大の先生に叱られながら育っているから、そういった勘違いをする人は少ないけれど・・。


でも、全体を見渡すと、青春時代に、夢を諦めずに人生を歩こうとしている人達の、集まりだったなと、つくづく思う。


諦めるのは、人生を生き続けていれば、いつでもできるのだから・・。



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狭〜い、畑の中の事なので・・。

シシーマニアさん

師匠、

「 知らない世界を覗く。
垣間見る。
これほど楽しいことはありません。」

こんな風に師匠が書いて下さると、又書く意欲が湧いてきます。

私の関心事は、ちょっとお宅っぽいので・・。

2016/10/26 20:25:19

畑違い

パトラッシュさん

わたくしは、美術と音楽、どちらにも、所詮縁なき衆生であります。
藝大のキャンパスなんぞ、異次元の世界。
秘境、正にそうです。
そこを闊歩する人々が、秘境人のように見えて、仕方ありません。

「キャッスル」に「大浦食堂」……
これには、大いに安心しました。
ああ、彼らだって、飯を食うんだと。

一本の 道が隔てる 畑二つ 大根人参 ほどの差あるや

知らない世界を覗く。
垣間見る。
これほど楽しいことはありません。

2016/10/26 16:02:50

美校という呼び名

シシーマニアさん

村雨さん、コメントありがとうございます。

村雨さんの周りの方々は、「美校」と仰っていましたか・・。半世紀前には、美術、音楽、という言い方をしていた様な記憶があります。
あるいは、これは美術側での通称なのかな・・。

「れっきとした」という言葉も、久々に聞いた気がします。真実を突いた言葉ですね。

我々は、「それで食べていける人」といった言い方をするかなぁ。

でも、食べていけなくても、れっきとした芸術家はいるわけですし、線引きは難しいところですが。

作家と演奏家では、又違いますけれどね・・。

そういえば、美術の学生さんは、公園あたりで見かけると当時ちょっと怖かったです。

2016/10/26 15:53:07

美校の人たち

さん

仕事で、美校出身のれっきとした画家や彫刻家の人たちと会うことが、何年か続いたことがあります。

想像するに、美校系の学生さんは、服装からして変わっていたのでは?

2016/10/26 11:28:00

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