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北軽井沢 虹の街 爽やかな風

小説その29 

2016年07月01日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し


スキーレンタルショップの仕事は3月末で終わった。結局、爽太の担当した店には客は少なく、ウエノさんのいる軽井沢駅前店の手伝いや、一回だけあった団体客のスキーと靴を万座スキー場へ届ける仕事の方が思い出としては強く残っている。ウエノさんとはすっかり仲良くなり、いろいろな過去の話なども聞くこととなった。スキーレンタルショップの仕事が終わりになるころ、4月の後半になればキャンプ場の仕事があるので紹介すると言ってくれたウエノさんの言葉が、爽太には最大の収穫だった。約3か月のアルバイトは、爽太にとって初めての経験であり、働いて他人から受け取る初めての給料は、考えさせられることも多かった。労働時間が短いとはいえ、一月働いて5万円ほどの報酬だ。これが自分の労働力かと思う気持ちと、たとえ5万円でも働いて得た報酬は嬉しい気持ちがこみあげてくるのだった。そして、この辺りでは冬はほとんど仕事がないので、生活が成り立たないということをしみじみと感じた爽太は、年金生活者として、はたしてこの地が適しているのだろうかと考え込んでしまった。
 
4月半ばを過ぎてもウエノさんから連絡はなかった。爽太は20日すぎにウエノさんに連絡をとったが、キャンプ場の求人がまだないという。焦った爽太は、スキーの仕事が終わるころ、社長から言われていた農業の仕事をやってみようと考え始めていた。
スキーレンタルショップをやっていた黒田社長の本業は農業だった。冬ここでの農業は低温と雪で仕事にならないので、スキーレンタルを思いついたという。「農業」という職業は、身近にあり誰もが知っているが、いざその仕事をするとなると、爽太は何か抵抗を感じるのだった。しかし、すでにここでの生活は始まっている。何もせずにぶらぶらしていても仕方がないという気持ちが強く、思い切って社長に電話をしてみた。
すると、人手が欲しかった社長は大喜びで、大歓迎してくれたのだ。さっそく社長に会うと、7月の中頃から毎年草津で野菜直売店をやるので、そこで野菜を販売してくれという。「野菜の販売」と聞いて爽太は二つ返事でそれを了承したが、9月末まで、休みなしで働けるかという質問に、すこし躊躇した。約75日休みなしで働けるか疑問もあった。第一やったことのない仕事でその一日のスケジュールもわからない。しかし、ここまできて引き下がるわけにはいかず、破れかぶれで承諾したのだった。社長は7月半ばまでのあいだ毎日ではないが、農作業の手伝いをしながら野菜販売の予備知識を得てくれという。
爽太はこれでひとまず仕事にありつけたが、「農作業」「野菜販売」という、考えてもいなかった仕事をすることになり、未知の世界に入る期待と不安が入り乱れ、75日休みなしという話も含めて、千恵子にどう説明しようかと悩むことになった。
しかし、帰宅してその話をすると、何も心配することはなかった。千恵子は、「もう決めてきたのでしょ。やってみたら」というではないか。何か明るい光が差し込んできたような気持ちになった爽太は、未知の世界へ進む武者震いを感じたのだった。
 

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