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敏洋’s 昭和の恋物語り

[舟のない港] (六十) 

2016年06月18日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



「夕食後の団らんの時だったの」
ミドリは、ポツリポツリと事の顛末を話し始めた。

「母と妹の三人で、貴方のことを話してたの。

毎日お部屋に行って、お掃除をしたり、夕食の支度をしたりしていることを。
ここ二、三日は残業の連続やら、兄が迎えに来たりしてアパートに寄れないから、寂しいって。
冗談まじりの会話だったのに、急に道夫兄さんが怒り出したの。

『お前は、どういうつもりなんだ。
彼と結婚の約束をしたわけでもないのに。
独身男の部屋に立ち寄ることがどういうことか、わかっているのか!』って。

いいじゃない、わたしがそうしたいんだから。
武さんが『迷惑だ』って言うのなら、私もやめるけど。
でもすごく喜んでくれるのよ、助かるって。
初めて兄に逆らっちゃった。

『馬鹿! お前は男のエゴがわかっていないんだ』
わたしを殴ったことなど一度もない道夫兄さんが、初めて顔を真っ赤にして殴ったの。
母は道夫兄さんをなだめ、妹はわたしをかばってくれたの。

でも、そのことが却って腹に据えかねたのか、
『俺が、御手洗に話をつけてやる』って、言い出したの。

私のことは放っといて! わたし、もう大人よ。道夫兄さんのおもちゃじゃないわ! って、叫んだの。
そしたら、『勝手にしろ! あいつがそんなに好きなら、この家から出て行け!』って言われて。

だから、‥‥わたし、来ちゃった」

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