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北軽井沢 虹の街 爽やかな風

小説その26 

2016年05月27日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し


やがて12月になったが、この年はまだ雪が降らない。地元の人の話では、ここ数年は地球温暖化のせいか気温も徐々に高くなっているという。氷点下20℃にはめったにお目にかからないと話す。そんなある日、爽太は北軽井沢のコンビニの駐車場で掲示板があることに気がついた。それには主に求人情報が貼ってあった。一つひとつ見ていると「スキーレンタルショップ」のアルバイト募集が目に入った。この仕事は簡単そうに思えた。そしてこれはあまり年齢は関係なさそうに思えた。帰宅して千恵子に話すと、「スキーもやったことのない人ができるわけないでしょ」とあっさりと一蹴されてしまった。しかしこれは当たってみる価値ありと考えた爽太は、ダメで元々と思い、恐る恐る電話をかけてみた。
案の定、すぐに年齢を聞かれ電話の向こうで、う〜ん、66歳ね、とあまり乗り気でないような声が届く。爽太は正直に事情を話すと、「じゃ、まあ一応来てみてください」と、面接することが決まった。「ほらほら・・ね。面接がきまったよ」というと千恵子は「ダメに決まってるでしょ」といい、顔を見ると、よせばいいのにと書いてある。
 
スキーレンタルショップのオーナーは地元の人で黒田と名のった。日焼けした丸顔は、見るからに働き者と言った様子で、今年はまだ雪が降らないのでいつから開店できるかわからないと話す。とても明るい性格で絶えず笑みをたたえながら、いろいろと質問してくる。爽太は、ダメ元で来ているので調子に乗ってよく話す。ここに来たわけや、ここまでのいきさつなどを話し、最後には「まあ、ダメならすぐにクビにしたらいいので、使ってみてください、こう見えてもこの男、よく働きますよ」と、タイミングを見て食い下がった。少し考えていたオーナーは「浅間さん、あんた面白い人ですね、じゃ、来てみてください」とOKが出た。そして「ところで、スキーをやったことはありますよね」という。爽太は、ついに来たか、と思ったがはっきりと「いえ、ありません」と答えた。オーナーの顔ははっきりと「これはダメだ」という感じだったが、「え〜、ないの・・」「困ったな〜」しばらく考えて、軽井沢駅前にあるレンタルショップの店に、ウエノさんという人が働いているので、そこへ行ってスキー靴を板にセットする方法を習ってきてくださいというではないか。爽太は、二言返事で了承したが、「大丈夫かな〜」と、オーナーは不安そうな顔だった。
そのオーナーの運営するスキーレンタルショップは、爽太が面接を受けた嬬恋村の今井と、もう一箇所、軽井沢駅前とプリンス通り、そして草津と万座の合計6か所もあったのだ。
 
意気揚々と帰宅した爽太は、一部始終を千恵子に話した。千恵子は信じられないといった様子だったが、「どうせ、すぐにクビになるわね」と笑っている。
翌朝、爽太は軽井沢へと向かった。軽井沢のスキー場は例年雪が降らなくても、人工雪で営業を始めるらしい。ここなら新幹線でやってきても、駅からすぐにスキー場があるので、簡単にスキーができる。レンタルショップは他の業者の運営するものもあるようだ。
午前9時過ぎ、爽太は駅前にある店のドアを開けた。店には頭がつるっつるの年寄りが一人いた。彼は爽太を見てすぐに「浅間さんですね。社長から聞いていますよ」と、ニコニコ笑いながら招き入れてくれた。爽太は挨拶を交わしながら、なんだこんな爺さんでもできるなら、私にできないはずはない、と早くも自信が湧き上がってくる。人の人生は出会いから始まるというが、ここに来てやっと仕事を見つけたけれど、このウエノさんとの出会いが、爽太のその後の人生に大きな影響を与えることになるとは、その時の爽太に分かるはずはなかった。
 
 
 

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