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独りディナー
笑ってきました。
2016年04月09日
テーマ:シニアライフ
山田洋次監督の「家族はつらいよ」を見てきた。
見てきたと言うよりは、笑いに行ってきた。
この年になると、生活も地味だし、せめて映画では単純に笑って楽しみたい。
でも、私が年を取ったせいなのだろうか・・。
私が吹き出す場所と、映画館全体が笑いに包まれる場所とが、微妙に違うのである。
私が一番笑ったのは、
70歳位の主人公が倒れた時に、次男の彼女として初めて当家を訪れていた看護師の蒼井優が、
「平田さん、平田さん、聞こえますか。聞こえたら私の手を握って下さい」と、プロフェッショナルな声で言った場所かな・・。
役者さんにしてみたら、何ということもない演技だろうけれど、突然看護師の声になったのには、笑った。
一瞬にして、その声で病院の情景が目の前に広がって楽しかった。
そして、今回印象に残ったのは、俳優の妻夫木聡。
どうやら彼には、いくらでも可能性があると見える。
暗さを背負った「悪人」や、情熱の塊の様な「若者たち」そしてコメディの「ザ・マジックアワー」。
でも、今回はコメディー映画の中で、最もまともな青年役を演じている。
そして、(※の部分は、パトラッシュ師匠のお言葉の無断拝借なのだが)離婚騒動を起こしている両親に、彼は言うのである。
※「美しい音楽を作るために、不協和音も必要なんだ」
夫婦の次男は、ピアノの調律師をやっています。
これがショパンのピアノ曲を引き合いに、こんなことを言うのです。
「時には、人間関係にもね…」※
見ていて、不協和音を引き合いに出すなんて、「妻夫木君、やったね!」と言いたい気分だった。
不協和音を使う事によって、それがむしろ美しさを引き立てている作品は、想定外な回り道のお蔭で、思いがけない経験をして目的地にたどり着くケースに似ている。
だから不協和音には、楽譜上で臨時記号がいくつも付いている場合が多い。
初見演奏をしたりすると、慌てる場所でもあるし、発展途上の生徒達が、最も譜読み違いしやすい場所でもある。
せっかくの聞かせどころの和音になのに、急に音楽が止まって楽譜を見直したり、臨時記号を見間違えて正真正銘の不協和音になってしまいかねない、危うい一瞬なのである。
でも、その不協和音の存在によって、その曲が不朽の名作と化している例が、いかに多いことか。
「不協和音」を比喩の言葉として使った人には、まさに座布団一枚である。
今回の音楽担当は、久石譲氏。
まさに適役だったと思う。
ジブリのアニメを引き立てている、数々の音楽の作曲者である。
昨年ポーランドで出会った若い女子学生が、私が音楽をやっていると聞くと、「日本の作曲家で、ジョーサイシの音楽が大好きです」と嬉しそうに言っていたなあ。
Jo Hisaishi.
ジブリと共に、世界的に支持者が居るらしい。
因みに、私は彼の音楽の支持者ではない、とはわざわざ言わなかったけれど・・。
妻夫木君が、調律をした後に、ショパンの有名なノクターンの最後を弾く場面がある。
俳優さん本人が弾いているパッセージの部分を不協和音と捉えて、そのあとの数小節は、最後の協和音にゆったりと落ち着く・・。
やはり山田監督の作品は、温かい。
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お恥ずかしい(汗)
お早うございます。
素晴らしいコメントを返してくださって
ありがとうございます。
専門の方に、不調和音、不調和音と間違った言葉を
平気で書き連ね、失礼しました。
お耳障りだったでしょう(笑)
2016/04/12 05:46:09
幸運か、不運か
彩さん、コメントありがとうございます。
今日はリハーサルで朝からつめていたので、お返事が遅くなりました。申し訳ありません。
コメント戴く、ということはとても嬉しいですね。
私は世界が狭くて、ピアノを弾くと言うことにこの50年間を費やしてきました。
自分は一流にはなれませんでしたけれど、一流の人をまじかで見てきました。
芥川の「天才」という随筆を、よく思い出しました。
この50年間、その繰り返しだった気さえするのです。
でも、その逡巡こそが自分の人生だった気もします。
相方も、ある意味では一流と言える人だと思います。
だからこそ、家庭内でも自分が二流であることに、向き合って人生を送ってきました。
これを、幸運と呼ぶか、不運と呼ぶか。
私はあえて、幸運と呼ぼうと思っています。
2016/04/11 20:09:35
私もなるほどと
シシーさんの立場で「家族はつらいよ」の鑑賞後の
感想を読ませていただいて、まだ観ずせず
納得する想いです。
(上映時間が合わず、まだ観られていないのです)
>不協和音を使う事によって、それがむしろ美しさを引き立てている作品は、、、、
この下りは、離婚を簡単に考えている熟年、若年層の夫婦に
教えてあげたい教訓だと思います。
さすがシシーさんの立場で、喜劇に仕上げた
この「家族はつらいよ」の熟年夫婦の離婚騒動、
家族の想いを語るに、この「不調和音」にスポットライトを
充てるあたり、スゴイ説得力です。
良く'性格の不一致で…’と、離婚釈明に便利に使う
昨今のご夫婦が居ますが、夫婦間にこの不調和音が
突然出て来るのは、むしろ当たり前の事。
このコンプレックスハーモニーをいかにナチュラル
ハーモニーに戻していくかが、夫婦、家族として
成長させる醍醐味だと思います。
私も出来ることなら、こんな醍醐味を味わえる相方が
居る家族が理想でしたわ。
2016/04/11 06:04:24
師匠はやはり、師匠です
師匠のギャラリーを訪問して、「不協和音」の言葉に惹かれました。
あれは、山田監督の音楽に関する見識の高さでしょうね。
映画にはピアノを弾く場面はよく出てきますが、実際に鍵盤上で弾いている映像は余り多くありません。
だからこそ、妻夫木君が実際に弾いていた数秒間は、私には彼の役者としての姿勢が見えた気がしました。
私は努力する人が、好きですね。
先生にはなれても、師匠にはまだまだ・・。
2016/04/10 12:57:11
なるほど
「危うい一瞬」以下のくだりは、さすがに音楽家の見識。
私などが、逆立ちしても書けないところです。
さらに……
> 俳優さん本人が弾いているパッセージの部分を不協和音と捉えて
ここには思いが及びませんでした。
参りました。
(私が、シシーマニアさんを、師匠とお呼びしなければ……)
2016/04/10 12:28:54