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北軽井沢 虹の街 爽やかな風

小説その8 

2016年01月22日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し


中軽井沢交差点から始まる国道146号は標高950mからつづら折れの峠道を登り切ると、一気に1400mの標高になり、鬼押しハイウエーの入口交差点に達する。
入口から500mほど進むと料金所があるが、ここはまだ長野県。料金所から1300mの地点が群馬県との県境でそこからは嬬恋村になる。そして、さらに800mのところが六里ヶ原のサービスエリアで、冬季閉鎖の時期以外はここにある信号機が作動している。
この六里ヶ原では、目の前に雄大な浅間山が望め、道路を挟んで北側には遠く草津温泉も確認でき、四阿山を始め白根山、遠くには谷川岳も望め観光客などの人気スポットになっている。ここまではほぼなだらかな道で標高は変わらないが、ここから一気に下り坂となり2900m行くと鬼押し出し園があり、さらに1500mの急こう配を下っていくともう一つの料金所がある。その料金所から1000m進むと県道235号との交差点があり、
爽太が帰宅する際にはこの交差点を左折することになるが、この地点の標高は1160mである。爽太と千恵子は、この約8kmの道のりをこれから利用することになるが、よく整備された道路はどちらを見ても素晴らしい景観で、いつも気持ちよく走ることができる。
 
助手席の千恵子は、その日はご機嫌でとてもはしゃいでいた。クイーンランド入口を左折して、ほぼ一直線の道は緩やかなアップダウンがあり、左手はゴルフ場になっている。
交通量の少ない雄大な道は両側を森に囲まれて延びていく。
時折他県から来た車が猛スピードで追い越していくが、そんな車を見ると、爽太も若い頃を思い出し苦笑するのだった。爽太は、高校1年の終わるころ、父から言われて運転免許取得のため学校を休んだことがある。そのころはまだ自家用車は少なく、免許を持っている人もそんなにはいなかった時代だ。高校を卒業するとき運転免許を持っていたのは、結局、爽太とタクシー会社の息子の二人だけだった。
その若い頃を含めて、爽太は現役時代、よくスピード違反で検挙されたものだった。罰金も計算すると相当な金額だったに違いない。しかし、ここに来て、スピードを出す必要もないし、どこを走っても素晴らしい景色なので、早く走るともったいないような気さえしてくるのだった。
しばらく進むと、右手に嬬恋村歴史資料館があり、そのあたりから緩やかに下りはじめ、しばらくすると蛇行した道路が急坂になり一気に下り降りる。下りきると信号機があり、国道144号に出る。そこは嬬恋村三原地域で銀行や郵便局がありちょっとした街になっている。国道144号沿いを流れる吾妻川にかかる三原大橋を渡り少し進むと、直進が草津温泉、左折が万座温泉という道標の場所に出る。ここからが万座ハイウエーだ。
ここからはほとんど登り道で、分かれ道へ入って急こう配にアクセルを踏み込んだとたん、二人の目の前に浅間山が姿を見せる。雄大な景色に千恵子の歓声があがる。
嬬恋プリンスホテルと嬬恋高原ゴルフ場を過ぎると料金所がある。何と万座温泉まで片道1050円だ。爽太は、初めて通行券を使う。綴りから一枚の券をとりにこやかな笑顔で、はいどうぞ、という係員に助手席の千恵子までどうもありがとうという。この日以来、千恵子はいつも料金所でにこやかな挨拶をするのだった。
すでに40年も一緒に暮らしているが、爽太はまだ千恵子を理解できない時がある。それは千恵子にもいえるのだが、他人同士が結婚という儀式によって夫婦となることにより、親子よりも兄弟よりも強い結びつきとなる結婚生活は、考えようによっては不思議な生活なのだ。誰も皆、わかっているようだがわかっていないことはたくさんあるに違いない。
「この山の色を見て!・・なんてきれいなんでしょう。これが全部紅葉する秋が見てみたいわ」車がターンするたびに歓声をあげる千恵子の顔は高揚していた。
確かに新緑の薄緑色はきれいだったが、爽太にはこれが紅葉するかどうか、そんなことは考えにも及ばなかった。万座温泉が近づくにつれて白樺の木が目立ち始めたが、標高が高くなると白樺の幹の色が変わってきた。そのことを言うと千恵子は、「これは白樺ではなくダテカンバよ」と白樺との違いを話し始める。
万座温泉に到着するまで、ついに千恵子の歓声とおしゃべりは止まらなかった。
 
 

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