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敏洋’s 昭和の恋物語り

長編恋愛小説 〜水たまりの中の青空〜(十四)私を守ってください 

2015年07月16日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



「いや、実、、、」
「いいのよ、何も仰有らないで。責めてるのでは、ないことよ。
武士さんは、悪くありませんわ。唯、お可哀相で。
でも凄い女性ね、男を手玉に取られるのだから。
ええっと。確か…お名前は、貴子さんでし、、」
「牧子さんは、そんな女性じゃ、、」
お互いの声が被さり合った。
「えっ?! 牧子さん?」
「貴子さん?」

麗子は狼狽した。
彼の相手が貴子であると思いこんでいた麗子は、牧子という名前は初耳だった。
顔色がサッと変わり、険しい表情になった。
彼にしても、貴子が不倫中だったと聞かされて、まさか! という思いだった。

「貴子さんが、不倫だなんて。何かの間違いでしょう!」
思わず、語気鋭く詰め寄った。
「ご存じなかったの? 井上課長さんが、お相手ですわ。
皆さん、ご存じのことでしたわよ。
とうとう上層部にまで知られて、お辞めになったとか。
その後釜でしたの、私は」

「そんな馬鹿な! あの、貴子さんに限って。嘘だ! 質の悪いデマだ!」
「嘘じゃ、ありませんことよ」
彼の狼狽ぶりに、麗子は勝ち誇ったように続けた。
「井上さんだけじゃ、ありませんわ。手当たり次第、ということでしたわ。
一人住まいの寂しさを切々と訴えられて、ご相談を持ちかけられたとか。
私を守ってくださいというのが、常套句だとお聞きしました。
武士さん、そのことでお別れになったのでしょ? 
落ち込んでらっしゃると思って、それで私」

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