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敏洋’s 昭和の恋物語り

長編恋愛小説 〜水たまりの中の青空・第一部〜 (十二) 色気より、食い気だ 

2015年04月27日 外部ブログ記事
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ハンバーガーを頬ばりながら、由香里は一人しゃべり続けた。
麻由美の羨ましがった様を、身振り手振りを交えて話した。
あまりの誉め言葉にこそばゆく感じる彼だったが、悪い気はしなかった。

余程に空腹だったのだろう、彼の食べかけのバーガーまでも口にした。
「ねえ、由香里のフィッシュとタケシさんの照り焼きと交換しようよ」
「いいよ、いいよ。あげるよ」
「だめえ! 由香里の食べかけも食べてくれなくちゃ。
ジュースも、交換だよ。そうだ、一緒に飲もう? ねっ、ねえってばあ」

はしゃぎ回る由香里に、やっぱり、高校生だと、微笑ましく感じる彼だった。
「あぁ、美味しかった。麻由美達と食べる時より、美味しかったよ」
「それにしても、大食漢だなあ。こんなに食べるとは、思ってもみなかった」
呆れ顔の彼に対し、由香里はお腹をポンポンと叩きながら
「由香里も、初めてだよ。やっぱり、朝を抜いたからかな」と、明るく笑った。

「そうだね。色気より、食い気だ。その内、豆狸になっちゃうだろうよ」
そんな彼の軽口に、由香里はプーっと頬を膨らませた。
「意地悪う」
「さあ、もう出ようか。一時を回っちゃったよ。あれっ! 凄い雨だ。こりゃ、困ったぞ。通り雨か」

激しく雨が、通りを叩き付けていた。
行き交う人達が、慌てて軒先に駆け込んでいる。
十分な歩道の幅があるというのに、車の水しぶきが容赦なく襲いかかっていた。

案に相違して、雨は降り続いた。
天気予報は、晴れだと告げていた。
店内の誰もが、傘など持ち合わせていない。
皆が皆、顔を曇らせていた。

業を煮やした猛者連が、少し小降りになったところで飛び出した。
それを契機に、幾組かのカップル達が飛び出した。
彼一人ならば勿論飛び出すのだが、由香里を雨に打たせるわけにもいかない。
「ねえ、アイスクリーム食べていい? すぐには、出られないでしょ」

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