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第66回 昭和35年晩春 放送係(1)
2014年07月28日
テーマ:テーマ無し
中学3年のクラスに慣れた頃、校内放送担当の吉子先生に、「放送係になって下さい。」と頼まれた。
放送することは、劇をすることに似ている様に思えたので、やりたいと思う。
それに、放課後のバレーボール部を負担に感じていて、止めやすくなると思い、引き受けることにした。
ところが、実際放送部の活動が始まってみると、おっちょこちょいであわて者の私には、かなり大変なことに気がつく。
充分慣れたことは、大分落ち着いて出来るようになってきたが、新しい慣れない事は慌ててしまうのだ。
ところが私は、新しいことに興味がわいてやりたくなる。
自分一人で活動することは、間違えばやり直せばよいし、周りが困ることは少ないと思う。
しかし、放送部の仕事は、間違ったら困るのだ。
まず朝の放送では、挨拶とその日の月日と曜日、そして行事も知らせる。
昼の放送は、レコード音楽鑑賞があり、作曲者と曲名を伝えた後、レコードプレーヤーの針をそっと上手にレコードの初めの位置に置かねばならない。
下校時の放送は、明日の予定の報告があり、祝祭日の時は、それと休日である事を知らせる。
放送10分前には、必ず放送室に行き、準備が必要だ。
2・3日に1回の当番だが、私はなかなか習慣が身に付かず、うっかりクラスメイトとおしゃべりしていて、クラスメイトに、「放送当番じゃあないの?」と知らされて、大慌てで放送室に行く有様だ。
一番初めに放送室に行って、落ち着いて準備をすべき私が、遅れて行くので、吉子先生に注意される。
その日はちゃんと時間前に着いて、放送を始めたのはいいが、曜日を間違えていったり、昼の音楽鑑賞の作曲家名や曲名を間違って言ってしまう。
ちゃんと、レコードを用意しているのに、間違えるのだ。
たとえば、「シューマンのトロイメラィ」を「シューベルト」と言いそうになったり、「モーツアルトの魔笛」を「魔王」と言い間違え、言い直す事になるのだ。
実に作曲家の方に失礼な話だ。
放送する内容を書いた台本が用意してあるが、当日の作曲家と曲名は空白になっている。
空白に名前を思い浮かべて放送すればよいのだが、間違えるのだ。
間違えるのに慣れている私だからこそ、間違えないための対策が必要だ。
それに、レコードを掛ける時、プレーヤの針をそっとレコードの上に置くことも、難しかった。
それともう一つ、放送前のチャイムを「ポン・ポン・ポン・ポーン」と鳴らすことになっていたが、注意しすぎて、リズムが狂ってしまうのだ。
本当にどうにかしなくっちゃ!
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