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八十代万歳!(旧七十代万歳)
ちびちびイヌ
2014年06月16日
テーマ:テーマ無し
ちびちびイヌのお話を稽古しているうち、だんだん好きになりました。あんまり怖くないお話ですが、機会があったら聴いてもらいたいです。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ちびちびイヌ マーガレット・リード・マクドナルド 「明かりが消えたそのあとで」 編書房
なにもかもうまくいかないお百姓の家がありました。魔女のナニばあさんがこのお百姓の家に魔法をかけたのです。
魔女のナニばあさんは、牧場の木戸に言いました。
「このうちのものは、だあれも通しちゃいけないよ」
そこで、だれも牧場に出ていけず、ヒツジの世話ができなくなりました。
魔女のナニばあさんは、メンドリ小屋の戸に言いました。
「このうちのものは、だあれも通しちゃいけないよ」
そこでだれもメンドリ小屋に入れず、メンドリの世話ができなくなりました。
魔女のナニばあさんは、井戸に言いました。
「このうちのものには、だあれも水を汲ませちゃいけないよ」
そこで、だれも水を汲めず、おかゆを作ることができなくなりました。
おかみさんは家の中でいらいらし、お百姓と息子はどうしてよいかわからず、庭をうろうろし、そして、女の子は川へ水を汲みに出かけました。
女の子が川につくと、みんなでちっちゃな黒い犬をおぼれさせようとしていました。その犬はちっちゃなちっちゃな犬で、汚くて毛はくしゃくしゃでした。みんなは言いました。
「こいつは飼い猫よりちっちゃくて、番犬にはなりゃあしない。家で飼うにもちっちゃすぎ、どこもかしこもきたなくて、毛はくしゃくしゃ。 おぼれさせちまったほうが、いいにきまってる」
女の子はみんなに、このちびちびイヌをくれるようにたのみました。
「ちっちゃくても、きたなくても、くしゃくしゃでもいいの」と、女の子は言いました。
「あたしはこの子が大好き」そこで、女の子はちびちびイヌを家へつれて帰りました。
するとおかみさんがどなりたてました。
「おかゆをつくる水がない。井戸に魔法がかけられた。その子もきっとあたしらといっしょに、のどがかわいて死んじまう」
けれど、ちびちびイヌが吠えたてました。
「ワン!ワン!ワン! ぼくがここにいる! ぼくがどうにかしてみせる!」
お百姓が入ってきて言いました。
「ヒツジのところに行かれない。 木戸に魔法がかけられた。 キツネがヒツジをねらってる。なのにヒツジのところに行かれない」ちびちびイヌが吠えたてました。
「ワン!ワン!ワン! ぼくがここにいる! ぼくがどうにかしてみせる!」
息子が入ってきて言いました。
「メンドリ小屋の戸に魔法がかけられた。 メンドリ小屋に入れない。 メンドリが卵を産んでくれない」
ちびちびイヌが吠えたてました。
「ワン!ワン!ワン! ぼくがここにいる! ぼくがどうにかしてみせる!」
「おまえが?」おかみさんが言いました。
「飼い猫よりもちっちゃいくせに!」
「おまえが?」お百姓が言いました。
「ちっちゃくて番犬にもなれないくせに!」
「おまえが?」息子が言いました。
「きたなくてくしゃくしゃのくせに!」
けれど、女の子はちびちびイヌを抱きしめました。
「おまえが!」
「おまえがどうにかしてくれるの? ほんとにどうにかしてくれるの!」
ちびちびイヌが言いました。
「どうにかしてみせる。してみせるとも!」
そして、ちびちびイヌは外へ出ていきました。
「わしらよりうまくやれるはずがない」と、お百姓がいいました。
けれど、ちびちびイヌはうまくやったのです。
「通れやしない」と、牧場の木戸が言いました。
「魔女のナニばあさんがおいらに魔法をかけたから。このうちのものはだあれも通させないように」
「だってぼくは、まだこのうちのものじゃないもの」と、ちびちびイヌが言いました。
そして、木戸を通っていきました。
ちびちびイヌはヒツジをみんな集めてヒツジ小屋へ入れ、キツネが手を出せないようにしました。
それからちびちびイヌは、メンドリ小屋へ行きました。
「通れやしないよ」と、メンドリ小屋の戸が言いました。
「魔女のナニばあさんが、あたしに魔法をかけたから。この家のものは、だあれも通させないように」
「だってぼくは、まだこのうちのものじゃないもの」と、ちびちびイヌが言いました。
それからちびちびイヌはメンドリ小屋に入り、メンドリをみんな巣に落ち着かせました。
そしてこう言いました。
「水を持ってきてあげる。だから、みんなぼくに一つずつ卵をうんでおくれ」
それからちびちびイヌは、井戸へ行きました。
「水は汲めないぞ」と、井戸が言いました。
「魔女のナニばあさんがわしに魔法をかけたから。このうちのものは、だあれも水が汲めないように」
「だってぼくは、まだこのうちのものじゃないもの」と、ちびちびイヌが言いました。
そうしてちびちびイヌは水を汲みました。
そこでおかみさんは夕食におかゆをつくることができました。
「なんてすごいちびちびイヌ!」と、女の子が言いました。
「もううちで飼ってもいいでしょう?」
「でも、まだ仕事がすんでない」と、ちびちびイヌが言いました。
ちょうどその時、魔女のナニばあさんがやって来ました。
「行かせて!行かせて!」と、ちびちびイヌが言いました。
「あいつをやっつけに行かせて」
そこでみんなは、ちびちびイヌを外に出してやりました。
魔女のナニばあさんはやって来ると、家のまわりを時計の針と反対まわりに歩き始めました。
「時計の針と反対まわりの魔法はよおくきくのさ」ナニばあさんは、ヒャッヒャッっと笑いながら言いました。
「ワン!ワン!ワン! お前の魔法はきかないぞ!」と、ちびちびイヌは怒鳴りました。
「おまえの後ろについて歩いて、おまえの足あとをみんな消してやったんだ」
「何をやったんだって?」
魔女のナニばあさんは金切り声をあげました。
そして、くるっと勢いよく振り向いたので、ホウキを落としてしまいました。
「ワン!ワン!ワン! こりゃぁいいことしてくれた」と、ちびちびイヌは言いました。
そしてホウキをまたいで立ちました。
ホウキが無いと、魔女のナニばあさんもうまく魔法がかけられません。
「しっ!しっ!」と言うことしか出来ませんでした。
「ワン!ワン!ワン!ちびちびイヌは吠えたてました。
「ぼくは飼い猫なんかじゃない。しっ!しっ!というのはやめとくれ。吠えるのも噛みつくのもとくいなのさ」
そして、ちびちびイヌはかみつき吠えつき、吠えつきかみつきました。
とうとう魔女のナニばあさんは、家の庭からころがるように駆けだして、道の向こうへ姿を消しました。そしてそれから二度とここへは現れませんでした。
女の子はちびちびイヌを抱きしめて、ずっとここにいなくちゃだめと言いました。
けれどもちびちびイヌは言いました。
「だって、ぼくはここのイヌじゃないもの」
「いいや」と、みんなは言いました。
「おまえはうちのイヌだよ」
「だってぼくはきたなくてくしゃくしゃだよ」
「うちの飼い猫もそうだよ」と、おかみさんが言いました。
「でもみんなあのこが大好きさ」
「だってぼくはこんなにちっちゃいよ」
「でもおまえはいい歯をしてる」と、お百姓が言いました。
「ぼくのしっぽをひっぱらない? ぼくにものをぶっつけない? ぼくが眠ってる時に踏みつけない?」
「しない!しない!しない!」みんなは大きい声で言いました。
女の子がちびちびイヌにミルクのお皿を持ってきました。
ちびちびイヌはミルクをぜんぶきれいになめてしまうと、ぐるっとまわりを見わたしました。
「ここがぼくにぴったり」
ちびちびイヌはそういうと、お百姓さんのスリッパのかたほうにもぐりこみ、ころんころんとねがえりを打ちました。そうしてぐっすり眠りこみました。
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いいお話でしょう。
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