ナビトモのメンバーズギャラリー

条件で調べる

カテゴリ選択
ジャンル選択

前の画像

次の画像

ギャラリー詳細

作品名 恋妻家宮本 評価 評価評価評価評価評価(5)
タイトル 楽しい映画です
投稿者 パトラッシュ 投稿日 2017/02/15 11:06:40

エンディングが終り、場内が明るくなるまで、観客の誰一人として、
席を立ちませんでした。
珍しいことです。
それは、取りも直さず、この映画が観客の心を、打ったということになります。

「面白かったわね」
「まあな……」
熟年夫婦の会話なんて、こんなものです。
新婚ではあるまいし、手に手を取って、感興をあらわにすることはありません。

今しも見終った映画が、夫婦関係の危機と、その和解を描いた、
好作品であっても、特に男には、妻の感激に、素直に同調しかねるところがあります。
今後のことが、あるからです。
夫婦間に、齟齬あるいは不調和が生じた時、とても映画の主人公ように、
良き夫では、居られないと、思うからです。

夫婦は一種の、ライバル関係と、言えなくもなく、張り合う相手への、
反撃権は、これを留保しておきたい。
という思いもあるわけです。

主人公夫婦の危機は、本の間に挟まった、離婚届からでした。
そこには、妻の署名捺印のみがあり、夫の方は、未記入です。
これつまり、何時でも、相手に突き付けられる、刃(やいば)のようなもの。
それを隠し持っていると知った、夫が平静で居られるわけはありません。

ちなみに、挟んであった本の名が「暗夜行路」。
志賀直哉の名作ですから、ご存知の方も多いでしょう。
不倫、不義が行われ、男女とは(そして親子も)こんなにも厄介な関係なのかと、
読む者によっては(特に、私のような、物事を深く考えない人間には)
うんざりし、途中で投げ出したくなる小説です。
映画の主人公の疑心を、象徴していなくもありません。

妻が離婚届を書いたわけ、それは、ネタバレになるので、書きません。
主人公は、中学校の教師。
担任する生徒の奇矯や、その家族の不和、料理教室の仲間の、夫婦間の不信、
そういったものを、織り交ぜながら、遂に夫も、離婚届に判を押すに至ります。
しかし……
この後のことは、映画をご覧ください。
私のレビューは、ストーリーを説明するためではなく、一人の観客として、
作品についての、感想を述べるものですから。

主演は、阿部寛。
長身で深目隆鼻、日本人より、欧米人に近い風貌と、言えなくもありません。
その偉丈夫に、決断力がない。
たかがファミレスにおいても、その注文が、容易に決まらない。
「そ、そ、それはですね」
「ど、どうも、すみません」
きっと、自信と言うものが、ないのでしょう。
頼りないのです。

奥さん役は、天海祐希。
よくしたもので、こちらは、しっかり者。
世間によくある例です。

喜劇的なプロローグです。
と言うより、全編是、喜劇なのですが。
そのあまりのドタバタぶりに、私は最初、失敗したかと思いました。
人に勧められ、来てみたら、意外に駄作だったということは、間々あることですから。

しかし、見ているうちに、主人公を、見直すようになりました。
不幸な生徒のために、教師としての職分を越え、力を尽くすからです。
「正しいことが、良いこととは限りません。『正しい』と『正しい』は、
ぶつかり合うからです。
『優しい』と『優しい』なら、ぶつかりません。二倍になるだけです」
蓋し、名言です。
流暢ではない、その語り口に、むしろ、説得力があるのです。

この映画、出だしは☆☆でした。
離婚届が出た辺りで、☆☆☆になりました。
そこに主人公が、サインをする段階で、私は、☆☆☆☆を付けました。
エンディングに居たり、決めました。
こりゃ、満点だな、☆☆☆☆☆よりないな……と。

随所に、仕掛けが施されています。
観客を驚かし、次の瞬間に、笑いを誘う。
これを、作為的、作り過ぎと、見るかどうかです。
映画を、エンターテイメントとして捉える、私には、十分に許容の範囲内です。

楽しい映画でした。
しかし、では、古女房と手に手を取り、感激を共にするかというと、
そう言うわけには、行きません。
それで、当欄をお借りし、このことを、皆様にお伝えしたくなったのです。

前の画像

次の画像



【パトラッシュ さんの作品一覧はこちら】

最近の拍手
全ての拍手
2017/02/20
プラチナ
2017/02/16
ななつ星
2017/02/16
澪つくし
2017/02/16
MOMO
2017/02/15
彩々
拍手数

29

コメント数

2


コメント

コメントをするにはログインが必要です

シシーマニアさん

阿部寛、という俳優さんは30数年前、「笑っていいとも」に出ていた頃、よく見ていました。

モデルで、未だ初々しくて、やたら背が高くて、適当にタモリにいじられていた、爽やかな好青年でした。

それが・・。

よくここまで、立派な俳優さんに成長したねぇ、と言いたくなります。

若いときから見続けている、という只それだけなのに、何か親戚のおばちゃん的な親しさを感じているのです。

歌舞伎俳優に対する感覚に似ていますね。

2017/02/17 11:48:52

パトラッシュさん

シシーマニアさん、
私は実は、阿部寛という男優を、知らなかったのです。
いや、名前くらいは、知っていましたが、スクリーンで見たのは、
初めてなのです。

必ずしも、演技は上手くないな……
というのが、初見の印象でした。、
しかし、この映画の場合は、その朴訥な感じが、主人公の性格に合っていて、一定の効果を上げているように、思いました。

目が大きいです。
これが、良いようでもあり、逆に、目が勝ち過ぎている印象もあり、長所とばかりは、言えないようです。
(昔の浅丘ルリ子もそうでした)

俳優と言うのは、難しい職業ですね。

2017/02/17 17:21:00


同ジャンルの他の作品

PR







上部へ