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キクさん
(第2話から続きます)
浦島太郎が話し終わると、深い沈黙が流れました。フキの父親が口を開きました。
「信じるよ。だってそのサザエはこの辺じゃ採れない。それにそんな綺麗な箱は見たこともない」
「開けちゃダメよ」と、フキ。彼女の母親は、
「化け物が出て来るに決まってる…くらばらくわばら」と後退りする始末。
浦島太郎は困り果て、
「どうしよう、これ?」と言うとフキが、
「お寺に奉納したらどうかしら?」
「それがいい!」
皆が賛成したので浦島太郎は風呂敷に玉手箱を包み、高台にあるお寺に向かいました。
2023/02/13 20:24:01
キクさん
住職は事情を聞き、光り輝く玉手箱を見て、
「ほう、これは…これを奉納して下さると」
「絶対に開けてはならないのです」
浦島太郎は念を押しました。
住職は箱を手にして振ってみました。
「…何も入っていないようだ。しかし、私も弱い人間だ。開けてしまわないとも限らない。他の者が開けるかもしれないし。ならば、埋めてしまおう」
「え?埋めるのですか?」
そして通りかかった庭師を呼び止めて、
「あの銀杏の下に小さな穴を掘って貰えないか?」
「お安い御用で」
住職は外に出て、風呂敷に包んだ玉手箱を穴に入れ、丹念に土を被せました。
「これで良し」
「どうもありがとうございました」
と浦島太郎はさっぱりした気分で、深々と頭を下げました。
大きな銀杏は紺碧の空をバックに黄金色に輝いています。遠くには煌めく海。穏やかな秋の日でした。
「竜宮城は綺麗だったな。しかしこの世はなんて美しいのだろう」
万感の思いで眺めていると、フキの声がしました。
「太郎さーん!」
「今行くよ!」
浦島太郎は銀杏の葉が落ちる中を走り出しました。
終わり
2023/02/13 20:30:54
キクさん
お読みいただき誠にありがとうございました。
ご意見、ご感想をお寄せ下さい。
なお、次作は「新・かぐや姫」を予定しております(^o^)
2023/02/13 20:34:50
onさん
ぼくは開けるかも〜
もうジジィだから
開けても関係ないかと…
2023/02/14 06:53:35
キクさん
onさん、そうですか?
キクは子どもの頃この話を読み、そんな玉手箱は受け取らなきゃいい、仕方なく受け取ったら埋めちゃえばいいと思いました(笑)
2023/02/14 07:02:42
阿吽倶流さん
完結しましてご苦労様でした。
私の聞いた話では心優しい浦島は、子供を叱らずにお小遣いをあげて買い取って、亀を海に逃がしたと言います。ちょっと違和感が、批判をごめんなさい。
2023/02/14 09:36:02
キクさん
阿吽倶流さん 、コメントをいただきありがとうございます。浦島太郎は各地に色々な話が伝わっており、内容が微妙に違うそうです。「お金を出して買い取る」のは「鶴の恩返し」にもあるそうです。いずれにしても、生き物をいじめてはいけないという教えでしょうか。
2023/02/14 11:52:23
漫歩さん
キクさんの「浦島太郎」面白かったです。
このおとぎ話は、戦時中の国民学校低学年(2年生だったと思います)の教科書で習っているので私は開けてしまいました。ですからいま白髪の老人になりました。
約束したことは守らなければいけませんね。
2023/02/14 16:11:44
キクさん
漫歩さん、コメントをありがとうございます。
誰もが知っている「浦島太郎」、話を作り変えるのはちょっと大変でした(T_T)
今、次回作の「新・かぐや姫」を書いていますが、行けそうです(笑)どうぞお楽しみに。
2023/02/14 16:20:02
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