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作品名 終わった人 評価 評価評価評価評価(4)
タイトル 苦笑しきり でも、楽しい映画
投稿者 パトラッシュ 投稿日 2018/06/28 13:49:49

「趣味なし」
「夢なし」
「仕事なし」
「そして我が家に居場所なし」
定年後の男、その多くが直面する、悩みであるそうだ。

この映画の主人公も、その一人。
東大卒、一流銀行に長く勤め、その後、子会社へと天下りした、
その経歴は、人も羨むほどに、輝かしい。
しかし、リタイア後はどうか……
ただの男へとなり果て、無聊をかこつ人生へと、陥っている。

彼は、生き甲斐を求め、ジムへ通う。
カルチャーセンターへと通う。
そこで生まれる、人間関係、これが物語を膨らませて行く。

若い経営者と知り合い、やがて請われて、その会社の顧問に就任する。
若い女性と知り合い、文学を通じ、そして、同郷であることから、
親子ほどの年齢差もものかわ、親密となる。
物語は、意外な変転を見せる。
その先に待っていたのは、当然の如くに「バラ色の余生」ではない。
それどころか、むしろ「こんなはずじゃなかった」事態へと陥る。

僥倖を期待させておいて「やっぱりだめだ」へ突き落とす。
もしやと思わせておいて「そんなウマい話はないよな」へ落着させる。
ストーリーは、巧みに練られている。
しかしながら、やや、作り過ぎの感もある。
「そんなことが、実際に起きるだろうか」と思わせる、
人の死などを含めた、人間関係に、不自然さがつきまとう。
ストーリーの都合で、いとも簡単に人を殺す。
それは、どの作家でも、やることではあるのだが……

それらに、目をつぶるなら、それなりに面白い。
大いに笑わせてくれる。
ただ、その笑いは、主人公への、同情もあってだろう、
苦笑あるいは、憫笑に近いものとなる。

私がこの前に見た映画「妻よ薔薇のように」における、哄笑とは大分違う。
いや、笑いの質なんか、どうでもいい。
笑わせてくれれば、それでいい。
と言う人には、それなりに、楽しい映画であるでしょう。
入場料分くらい、しっかり「元が取れる」はずです。
私は、上映時間の約二時間が、短く感じられたくらいです。

 * * *

「甘いなぁ……」
私も、主人公に対し、憐れんでいた一人です。
そこに、エリートの不遇な末路を見ることで、
カタルシスに至ったということも、あるでしょう。
私なら、あんなへまはやるまいぞ。
妻との仲だって、程よく保って見せるぞ。
という自信があるからでしょう。

実際に私は、若い頃から、多趣味でした。
あり過ぎて、困るくらいでした。
「まったく、道楽者なんだから」
妻からは、しばしば、呆れられていました。

捨て去った趣味も、少なくない中で、長く続いているのが、囲碁です。
長年営んでいた商売を、廃業した後は、小さいながら、
囲碁サロンを開き、そこで一日の大半を過しています。
日中を、別居状態で過ごすことにより、妻に疎まれることもありません。
夢もあります。
後進を育て、その中の俊秀、特に小中学生を、囲碁の高段者へと導くことです。

「道楽は、若い時から」
これが私の、座右の銘でした。
その銘に、間違いがなかったことを、この映画を見ながら、再確認した。
というわけです。
だから、この映画、私にとっては、「胸のすく映画」ということも、出来るのです。

映画が終り、館内を見回したら、またもや、笑わせられました。
ここでも苦笑です。
私も含め、年齢的には「終わった人」ばかりだったからです。

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コメント

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漫歩さん

最後の1行が効いています。

「終わった人」寂しいですね。

2018/06/28 18:32:52

パトラッシュさん

漫歩さん、
「年齢的には」……ですから。
場内の「終わったように見える人」全員が、「いや、自分は終わってない」と思っていることでしょう。

2018/06/29 05:23:08

彩々さん

「終わった人」というタイトルに、映画館にまで
足を運ぶ気がしなかったのです。
タイトルだけで、リタイヤ後のシニア向けの
内容だろう、直ぐわかるからです。

私も過日観た「妻よ薔薇のように」は、その
テーマに夢を感じさせてくれ、日常の笑いを
提供してくれる、楽しいものでした。

でも、パトさんの「終わった人」の映画鑑賞後の感想を
読ませていただき、俄然、この映画を観に行きたく
なっています。

>私も含め、年齢的には「終わった人」ばかり

    ↑
 パトさんの最後の3行に触発されました。
確かめてきます(笑)

2018/06/29 06:52:52

パトラッシュさん

彩々さん、
貴女は「終わった女(ひと)」でないどころか、
現役真っ盛りの人ですからね。(念のため)

この映画、私も最初は、気乗りがしませんでした。
きっと、暗い映画だろうと。
口コミで、喜劇と聞き、行って見る気になりました。
楽しい映画でした。
内館牧子さん、よくストーリーをこしらえてあります。
見に行って、後悔はないと思います。

2018/06/29 11:52:28


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