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作品名 北の桜守 評価 評価評価評価評価(4)
タイトル ハンカチをお忘れなく
投稿者 パトラッシュ 投稿日 2018/03/25 08:47:24

「吉永小百合が、あんな幼子のお母さんって、ちょっと違和感があったわ」
映画館を出て、すぐに妻が言いました。
いや「館」ではありません。
最近は、シネマコンプレックス、略してシネコンというのだそうです。
だから、その7番スクリーンを出て、すぐに……ということです。

「そんなとこが、気になったかねぇ……」
「ピンクの羽織を着て、精一杯、若作りしているけど、
歳は争えないでしょ」
「そうかなぁ……」
私は、気になりませんでした。
夫婦で、同じものを見ても、感懐が違うのは、よくあることです。
と言うより、我が家では、それが常態なのです。

私は物事を、先ずは、大局的に見ようとします。
彼女は、細部に目が行きます。
それは、男女差と言うより、性格上の違いであるかもしれません。

この映画は、私の方から誘いました。
吉永小百合が主演と聞いて、なら、間違いなかろうと、思ったからです。
彼女に首ったけ……という訳ではありませんが、
他に、是非にも見たいという、女優さんはいません。
だから私は「消極的サユリスト」ということになります。
大竹しのぶなんかも、そりゃ、悪くないとは思いますが、
その“人となり”から発せられる「光被」を比較すれば、
それは大分違うのです。

一言で括れば「涙なくして見られない映画」ということになるでしょう。
樺太からの引揚げ者を狙う、ソ連軍の容赦ない機銃掃射、
そして引揚げ船への魚雷攻撃。
まったく、酷いことをするものです、無辜の民に対し。
命からがら、本土に戻れば、待っていたのは、北海道の極寒の中の、
極貧の生活。
母子二人、よくぞ生き延びたと言う以外にありません。

苦難をバネに、勉励したのでしょう、息子は長じて、アメリカに渡り、
時を経て、外資系チェーン店の社長にまで、昇りつめ、帰国しました。
しかし、再会を果たした母には、病魔が迫りつつありました。
いえ、身体は達者なのです。
古い記憶は鮮明に残っているけれど、最近の認識となると、
途端に茫々とになる。
そういう病気です。

昔の記憶を辿りつつ、雪の北海道を旅する二人。
懐旧の中に繰り広げられる、決して小さくない、かつてのドラマの数々。
そして、桜の木への、限りない愛を見せる老母。
母と子の情愛を、淡々と叙しつつ、その背後には、
無数の詩が漂っている。
そういう映画です。

これを「褒貶の分かれる映画」という事も出来るでしょう。
「貶」の代表は「んな、ばかな……」でしょう。
不自然さの多くは、小百合さんの年齢に起因しています。
夫との、かつての恋人との、そして子との不釣り合いです。
私の妻も、そこに違和感を、感じたということになります。

劇中劇として、ドラマを象徴する形の、舞台が現れます。
人々が、黙して踊ります。
この意味を、にわかに飲み込めない観客も、少なくないでしょう。
実を言えば、私もその一人です。

戦争の悲惨さを、知らない若者が、増えていると聞きます。
細部において、不自然さはあるとしても、この映画、若い世代にこそ、
見てほしいと思います。

エンディングの長さが、気になりません。
もっと長くても、いいくらいです。
目尻から溢れた涙が、乾くまでに、もう少し時間がほしい。
そういう映画でありました。

さあ、飯だ。
「カツ丼でも食って、帰ろうか……」
「ねえ、おにぎりにしない? コンビニの……」
「何でまた?」
「急に、食べたくなったのよ」
そう言えば、映画の中に、おにぎりの出て来るシーンが、
幾つもありました。
時には、命をつなぐ糧として……です。
妻は妻なりに、映画の余韻に浸りたかったのかもしれません。

結局、中を取り、蕎麦にしました。

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コメント

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漫歩さん

「吉永小百合が、あんな幼子のお母さんって、ちょっと違和感があったわ」
「そんなとこが、気になったかねぇ……」


実は、私は奥さん的鑑賞をする最たる者です。

舞台と違い、映画やテレビドラマのような映像で年齢的な違和感が目立つと、素晴らしい演技でも白けた気持ちを補へません。

「こりゃ駄目だ!」。

極言すれば、子供の学芸会でのお爺さん、お婆さんなら愉しいですが、シリアスな作品ではいけません。苦笑してしまうのです。

素直でない見本ですね。(笑)


日本人がメーキャップ部門でアカデミー賞をとりました。
私に四の五の言わせないときも近いでしょうか。

2018/03/25 10:35:07

パトラッシュさん

漫歩さん、よくわかります。
私の妻もそうですが、きっと、お目がよろしいのでしょう。
私は、視力が、経年劣化しつつあります。
時には、それが、幸いすることも、あるようでして……

そして、また、歌舞伎を見つけていることもあります。
あそこでは、男が女をやったり、じいさまが、姫をやったりと、厚化粧の上での、やりたい放題をやっておりますので……
私は、少々の違和感には、驚かなくなっております。(笑)

2018/03/25 16:51:17


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