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脳の老化予防 

2023年12月14日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し

https://mag.nhk-book.co.jp/article/38371


運動はわたしたちをストレスから守り、脳の老化を後戻りさせる
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2023/10/01

運動 健康 認知機能 PMS ストレス 認知症 老化
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 ストレス、不安、うつ、ホルモンバランス、PMS、認知症などに運動が良い影響をもたらすことを明らかにしたロングセラー『脳を鍛えるには運動しかない! 最新科学でわかった脳細胞の増やし方』。運動が脳を育ててよい状態を保ち、心身の様々な悩みを解決するという研究は、これまでに数多くの読者を勇気づけてきました。当記事では、本書の15万部突破を記念して、本文の一部を公開します。

人類の脳の回路には、体の活動と学習とのつながりが組み込まれている
 運動すると気分がすっきりすることはだれでも知っている。けれども、なぜそうなるのかわかっている人はほとんどいない。ストレスが解消されるから、筋肉の緊張がやわらぐから、あるいは、脳内物質のエンドルフィンが増えるから――たいていの人はそんなふうに考えている。でも本当は、運動で爽快な気分になるのは、心臓から血液がさかんに送り出され、脳がベストの状態になるからなのだ。わたしに言わせれば、運動が脳にもたらすそのような効果は、体への効果よりはるかに重要で、魅力的だ。筋力や心肺機能を高めることは、むしろ運動の副次的効果にすぎない。わたしはよく患者に、運動をするのは、脳を育ててよい状態に保つためだと話している。

 科学技術に支配され、世界のどこの様子もプラズマ画面ですぐに見られる現代にあって、人間が動くように生まれついていること、つまり動物だということは忘れられがちだ。それはわたしたちが動かなくていい生活を築いてきたからだ。皮肉なことに、生物として当然の活動さえしなくてすむ社会を夢想し、計画し、実現した人間の能力は、運動をつかさどる脳の領域に根ざしている。人類は過去50万年にわたって、絶えず変化する環境に適応するために、身体能力を磨き、思考する脳を進化させてきた。ともすればわたしたちは狩猟採集生活をしていた祖先を、もっぱら体力に頼って生きていた野蛮な人間と見なしがちだが、彼らにしても長く生き延びるには、知恵をはたらかせて食物を見つけ、蓄えなければならなかった。人類の脳の回路には、食物と体の活動と学習とのつながりがもともと組み込まれているのだ。
運動はわたしたちをストレスから守り、脳の老化を後戻りさせる
 しかし、わたしたちはもはや狩りも採集もしていない。そこに問題がある。動くことの少ない現代の生活は人間本来の性質を壊し、人類という種の存続を根底から脅かしている。証拠はあちこちに見られる。アメリカのおとなの65パーセントが太りすぎで、国民の10パーセントがU型糖尿病を患っている。運動不足と栄養の偏りが原因の破滅的な疾病だが、生活習慣によって十分予防できるはずだ。かつては中高年の病気と言われていたこの疾病が、今では若い人たちにも広まりつつある。わたしたちは自分で自分の首を絞めているようなもので、しかもそれは生活のすべてが特大サイズのアメリカに限った話ではなく、先進国全体の問題となっている。もっと気がかりで、しかも、ほとんどだれも気づいていないのは、動かない生活は脳も殺してしまうということだ。実際に脳は縮んでいくのである。

 脳を最高の状態に保つには、体を精一杯はたらかせなければならない。本書では、体の活動がわたしたちの考え方や感じ方にとって、なぜ、そしていかに大切なのかを説明していこう。運動すると、脳の学習機能を支える基本要素にどんな指示が出されるのか。運動は、気分や不安や注意力にどんな影響を及ぼすのか。どうやってわたしたちをストレスから守り、脳の老化をいくぶんでも後戻りさせるのか。そして女性に関して、ホルモンの変調がもたらす厄介な症状を運動がどのように阻止するのか。そういったことを科学的に説明していきたい。ランナーズハイのような、あいまいな概念について語るつもりはない。そもそも、ここで語るのは概念ではない。実験室のラットで計測し、人間において確認した具体的な変化なのだ。
運動をすると、脳の機能がその根元から強化される
 運動をすると、セロトニンやノルアドレナリンやドーパミン――思考や感情にかかわる重要な神経伝達物質――が増えることはよく知られている。読者の皆さんも、セロトニンについては耳にされたことがあるだろうし、その不足が抑うつに関係していることもご存じかもしれないが、わたしが会ってきた多くの精神科医でさえ、それ以上のことはあまり知らないようだ。強いストレスを受けると脳の何十億というニューロンの結合が蝕まれることや、うつの状態が長引くと脳の一部が萎縮してしまうこと、しかし運動をすれば神経化学物質(神経伝達物質のほか、ニューロンの成長や機能調節などさまざまな役割を担っている化学物質の総称)や成長因子がつぎつぎに放出されてこのプロセスを逆行させ、脳の基礎構造を物理的に強くできること、そういったことをほとんどの人は知らないのだ。実際のところ脳は筋肉と同じで、使えば育つし、使わなければ萎縮してしまう。脳の神経細胞(ニューロン)は、枝先の「葉」を通じて互いに結びついている。運動をすると、これらの枝が生長し、新しい芽がたくさん出てきて、脳の機能がその根元から強化される。

 神経科学者たちは、運動が脳細胞の内部――遺伝子そのもの――に及ぼす影響を研究し始めたところだ。生物の基礎である遣伝子レベルでも、体の活動が心に影響することを示す兆候が見つかっている。また、筋肉を動かすとタンパク質が作り出され、血流に乗って脳にたどり着き、高次の思考メカニズムにおいて重要な役割を果たすことがわかってきた。そうしたタンパク質群にはインスリン様成長因子(IGF-1)や血管内皮成長因子(VEGF)などがあり、その発見により、心と体の結びつきを新たな角度から見られるようになった。神経科学者がこうした因子の機能に注目し始めたのはここ数年のことだが、続々と新しい発見がなされ、驚異的な事実が明かされている。脳のミクロの環境でなにが起きているかについては、わからないことの方がはるかに多いが、すでにわかっていることだけでも人々の生活は変えられる。そして、おそらく社会も変えることができるはずだ。
運動は、認知能力と心の健康に強い影響力をもっている
 わたしが願うのは、運動が脳のはたらきをどれほど向上させるかを多くの人が知り、それをモチベーションとして積極的に運動を生活に取り入れるようになることだ。もっとも、それを義務だとは思ってほしくない。運動はもちろんするべきなのだが、無理強いするつもりはない(おそらく、そんなことをしても無駄だ。ラットの実験により、強制された運動では自発的な運動ほどの効果が出ないことがわかっている)。運動をしたいと心から思えるようになれば、そのとき、あなたは違う未来へ向かう道を歩み始めている。それは生き残るための道ではなく、成長するための道なのだ。

 わたしが目指すのは、運動と脳をつなぐ驚きに満ちた科学をわかりやすい言葉で語り、それが人間の生活にどのような形で現れるかを示すことだ。そして、運動が認知能力と心の健康に強い影響力をもっているという認識を確かなものにしたい。運動は、ほとんどの精神の問題にとって最高の治療法なのだ。

脳を鍛えるには運動しかない! 最新科学でわかった脳細胞の増やし方
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著者
ジョン J. レイティ
医学博士。ハーバード大学医学部臨床精神医学准教授。マサチューセッツ州ケンブリッジで開業医としても活躍。著書に『へんてこな贈り物』(インターメディカル)、『シャドー・シンドローム〜心と脳と薬物治療』(河出書房新社)(キャサリン・ジョンソン博士との共著)、『脳のはたらきのすべてがわかる本』(角川書店)など。

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