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Polyglotに憧れて
水素への過度な期待は禁物
2023年02月06日
テーマ:テーマ無し
水素への過度な期待は禁物 株式投資に関する雑誌などで、今後注目される分野の中に水素ビジネスを取り上げている記事をよく目にします。水素に関して誤解を生じさせるような、夢や希望を感じさせるような内容が書かれていたりします。果たして水素は夢のエネルギーでしょうか。水素が脱炭素の主役になれるでしょうか? エネルギー総合工学研究所が公表している新エネルギーの展望の中で、2000年発行の「水素エネルギー」を参照しました。 新エネルギーの展望 | 一般財団法人エネルギー総合工学研究所新エネルギーの展望(昭和63年〜平成20年) 新エネルギー(再生可能エネルギー)について紹介した小冊子で、(財)電力中央研究所の委託業務「エネルギー技術情報に関する調査」の一環により発行しました。下記よりダウンロード可能です。 www.iae.or.jp この報告書P6に体積あたりの水素の発熱量が他の化石燃料と比較して記載されています。気体の場合 水素ガス 2.95 kcal/L 天然ガス 9.59 kcal/L液体の場合 液体水素 2410 kcal/L LNG 5640 kcal/L ガソリン 8590 kcal/L メタノール 4290 kcalLとなっています。体積あたりで比較すると、水素ガス、液体水素はともに発熱量が少ないことがわかります。 水素を生成する方法はいろいろあるようですが、化石燃料を使用する場合は必ずCo2を発生することになるので、脱炭素という観点からは解決になりません。水を電気分解して水素を生成する場合のみ、脱炭素の解決法になりえます。 水を電気分解するには電気エネルギーが必要ですが、その必要なエネルギー量は、生成された水素のエネルギー量よりも大きくなります。つまり、エネルギー的には電気から水素を作ると損をすることになりますね。 たとえエネルギーを多少失ったとしても、水素を生成するだけの価値があれば、水素を作る意義はあります。水素は様々な化学工業で使用されています。それだけ水素が持つ性質が役に立つからだと思います。 でも、エネルギーとして使用することには疑問が生じます。水素を生成するために、電気エネルギーを消費するのなら、最初から電気エネルギーの形で消費すればよいのではないか?損失を出してまで電気から水素へ変換する意味がどこにあるのでしょう。 電気エネルギーは極めて便利で優れた性質を持っています。電線によってかなりの距離を簡単に運ぶことができます。スイッチによって簡単に入・切が可能です。周波数を変えることができます。使用後も有害な排ガスや廃棄物を出しません。我々の身の回りには電気製品が溢れていますが、それは何故でしょうか。結局、電気エネルギーがとても優れているからこそ、様々なものが電気を利用する方向へと変化したのです。パソコンやスマホ、半導体、センサー、ドローン、すべて電気を使っています。電気は相対的に見て安全でクリーンなのです。 一方、水素はどうでしょう。前述のように、化石燃料と比べると水素はエネルギー密度が劣ります。水素は燃焼の反応速度が速いという特性があり、うまく使えば役立つとしても、水素爆発などを生じる、危険なものでもあります。水素は鉄に浸透すると、鉄が脆くなって破損の原因になります。水素脆性というそうです。水素の取り扱いには相当な注意が必要であることがわかります。 以上のように、エネルギー源として考えたとき、水素は電気と比べて明らかに劣ります。コスト面でも劣ることは明らかです。そもそも電気から水素を生成する過程でエネルギーの損失が生じます。かつ、水素を液体にするには冷却する必要があり、そのためにもエネルギーを消費します。液体水素を運搬するにもエネルギーが必要です。これだけ苦労をして水素をエネルギーとして使用するのは馬鹿げていると考えられます。 それでも水素が注目されているのは、電気にも弱点があるからです。電気は大量に貯蔵することが困難であり、また、超長距離輸送も困難です。こういった電気の弱点を補うべく、あくまで補助的な役割でならエネルギー源としての水素が役立つかもしれません。 ここまで見てきたように、エネルギーとしての水素に過度な期待を持つのは禁物だと言えるでしょう。私は水素エネルギーが脱炭素に向けての主役になるとはとても信じられません。ですから、株式投資を考える上でも、水素ビジネスへの投資は慎重に考えた方が良い、と思っています。
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