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たかが一人、されど一人

読後感「大地の子」山崎豊子著 

2022年05月20日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し

 30年以上前の作品でテレビ化もされたりしてかなり有名だが、読んだことがなかったので古本を購入して、ブログを休止している間に読んでみた。著者は<あとがき>で執筆に当たり、1984年から調査に取り掛かったが中国政府、特に胡耀邦総書記の理解と協力がなければこの作品は実現しなかっただろうと書いている。従って史実に比較的忠実であろうと考えても良いのかもしれない。物語は先の大戦当時、日本政府の国策に乗って長野県から開拓民として満州に渡ったある一家の終戦後の物語。文庫本にして4冊の長編だが、1945年8月半ばの引き上げで一家はばらばらとなり、取り残された7歳の男の子が主人公とも言えるが、彼が経験する苦労は現代の我々には想像を絶している。家族は引き上げの途中5歳の妹以外全員死亡。彼や妹も生き延びたと言っても、野垂れ死にした家族の脇で息をしていた家畜同様の存在。たまたま現地人に拾われて人間として育てられるが、妹がどうなったかは不明。育てられたと言っても当初は奴隷以下の存在で売られたりするが、この辺は昨年8月に読んだ「けものたちは故郷を目指す」安部公房著とそっくりだ。しかし優しい教員夫婦に買われて成長していくが、成長過程にも多くの試練と困難が離れない。理由は中国自体社会体制が安定せず、共産党支配が確立していく荒波に翻弄されざるを得なかった。このことが小説を通して丁寧に描かれる。先日も今年の共産党青年団の新団員入団式の報道を興味深く観たばかりだが、共産党支配が確立していく中での国民の混乱も凄い。またも人命無視の中で彼も成長して立派な党員となり、日中共同の製鉄プラント事業に技術者として関わるようになる。この事業が小説のもう一つの柱で、戦後の中国と日本の関係が描かれる。この事業を通じて満州時代に兵隊に取られて生き別れになった日本の父親に巡り合うが、彼は既に中国人の父親(親切な教師)が居て実感はわかない。また中国社会で一応の社会的地位を占めた彼は満州で生き別れた妹探しに努力、結果発見に成功するも、妹は彼と異なり奴隷状態での40年だったか50年。結局発見した数日後には亡くなってしまう。話の締めくくりとしては、製鉄プラント事業も紆余曲折を経て完成するが、戦後の日中関係を象徴して、これも一応と言わざるをえない。大昔に著者の「華麗なる一族」を読んだ記憶があるが内容は殆ど記憶していない。何れにせよ家族関係のドラマ化は得意なんだろう。読み物としては面白いが、国家に翻弄される個人の虚しさを禁じえない。

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