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日本イコモス国内委員会は『日本最古の鉄道遺構「高輪築堤」の現地全面保存と高輪ゲートウェイ駅周辺の開発計画見直しの要望書』を出しました。 

2021年06月01日 外部ブログ記事
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一般社団法人日本イコモス国内委員会は、各関係機関へ「日本最古の鉄道遺構「高輪築堤」の現地全面保存と高輪ゲートウェイ駅周辺の開発計画見直しの要望書」を出しました。

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? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? 令和3年5月24日国土交通大臣 赤羽一嘉様文部科学大臣 萩生田光一様文化庁長官 都倉俊一様東京都知事 小池百合子様東京都議会議長 石川良一様東京都教育委員会教育長 藤田裕司様港区長武井雅明様港区議会議長 三島豊司様港区教育委員会教育長 浦田幹男様東日本旅客鉄道株式会社代表取締役社長 深澤祐二様
? ? ? ? ? ? ? 一般社団法人日本イコモス委員長 岡田保良
日本最古の鉄道遺構「高輪築堤」の現地全面保存と高輪ゲートウェイ駅周辺の開発計画見直しの要望書
時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。? すでに多くの関連学協会等から「高輪築堤」の保存の要望書が出されていますが、わたしども日本イコモス国内委員会(以下、日本イコモス)でも、この築堤保存の計画について強く関心を持ち、懸念を感じているところです。? 私たち日本イコモスは、今回発掘されつつある「高輪築堤」が、日本の近代化遺産としては21世紀における最大の発見とも位置付けられる遺産であり、世界文化遺産として国際社会が評価する可能性もあるものと考えています。そして、この遺産の保存と利活用のあり方を検討することは、コロナ禍以前の価値観で計画された今回の高輪ゲートウェイ駅周辺の r品川開発プロジェクト」を見直し、アフターコロナのあたらしい価値観とこれに基づいた 将来のまちづくりを展望する重要な契機になるものと思っています。? 「高輪築堤」は、日本の鉄道の出発点を示す施設であるとともに、日本の近代化の原点を物語る施設です。日本の近代化を語る上で最も初期の、最も重要と思われる鉄道遺構が、今回発見されたことになります。? 1872年(明治5)に竣工した「高輪築堤」を走る新橋〜横浜間の鉄道路線は、イギリスからのお雇い外国人の指導を受けながら、日本の従前の築城や台場建設等の土木技術の伝 統を活用して建設された国際的な技術交流の成果と言えましょう。世界史的にみれば東アジアで最初の鉄道であり、植民地鉄道とは違い、わが国が国家プロジェクトとしてつくった 自律的な鉄道です。? 「高輪築堤」は、神奈川につくられた「横浜築堤」と同様に、海上に築かれた技術的難度の極めて高い土木構築物で、このような貴重な遺構が、建設当時の全長約 2.7kmのほぼ半分の1.3kmが完全に近い形で連続して残されていたことに驚きを隠せません。錦絵でしか見ることのなかった海上築堤の橋のある姿は、二つの石積み橋台をみて実景に変わりました。現地見学をした日本イコモス会員は、誰しも「世界文化遺産に匹敵する」と確信しております。? 稀有な文化遺産である「高輪築堤」を最大限に生かした開発事業をあらたに構築することは、歴史的価値が極めて高く、世界的にもまれな都心開発プロジェクトになります。そ れはまた、ここに集い、働くすべての人びとにとって、うるおいと文化的意味の深奥を伝 える場になるとともに、高度に洗練された開発プロジェクトになることを、私たちは強く 信じています。? このことから、日本イコモスは、今回発見された貴重な遺構の、その延長部分も含めた十全な発掘調査が必要と考えるとともに、貴重な遺構を含む高輪ゲートウェイ駅周辺の開発計画を見直し、「高輪築堤」と関連遺構の全面的な保存と時代の流れや価値観の変化に即した、あらたな計画を構築すべきことを、以下に記す3つの観点から強く要望します。???1・文化遺産としての世界的な意義と価値
? わが国最初の鉄道である新橋〜横浜間は、世界史的にみれば東アジアで最初の鉄道でもあり、植民地鉄道とはちがうわが国が国家プロジェクトとしてつくった自律的な鉄道であることは、すでに記述しました。1872年(明治5)の開通以来、基本的な鉄道ルートは変わりなく、沿線や周辺には開業当初からの鉄道遺構や関連施設が数多く残り、最近まで今日の鉄道を地下で支えてきました。終点の旧新橋停車場跡は史跡に指定され、開業当時の駅舎や線路等の一部が復元されていますが、さらに新橋〜横浜間の鉄道遺構の連続的な保存と活用ができれば極めて大きな意義があります。? かつては「高輪築堤j以外に、神奈川県には「横浜築堤」が存在し、築堤土に利用された 神奈川の切り通しは鉄道路線として現存し、また工事監督者であった高島嘉右衛門が指揮した高島台など、横浜にも関連施設や遺構、遺物を確認することができます。路線に残る現役の煉瓦橋台も、興味引かれる構造物です。今後調査を深めれば、関連施設や遺構は、まだまだ発見されることが予想されます。? 「高輪築堤」を含む日本で最初の鉄道工事には、イギリスのお雇い外国人が深くかかわり ました。横浜の外人墓地には、祖国の地を踏むことなく客死した建築師長のエドモンド?モレルをはじめ8人の技師や医師の墓があります。ここに眠る8人の名前を記した銘板は、いうまでもなく、1991年(平成3)に東日本旅客鉄道株式会社が設置したものです。品川区の京浜東北線と山手線とがわかれる線路脇の東海寺墓地には、新橋〜横浜間の鉄道工事 責任者であり、「日本の鉄道の父」といわれる井上勝の墓もあります。「高輪築堤」を核に新橋〜横浜間のわが国最初の鉄道遺産巡りの道とともに、浜松町〜東京駅間の煉瓦の高架アーチ橋や東京駅などを構成要素に加え、「文明開化の鉄道トレイル」が構築できれば、都市に住み働く人びとのあらたな集いの場所となり、有力な文化観光資源 にもなることは間違いありません。? 現在、鉄道遺産としてユネスコの世界文化遺産に登録されている数例の鉄道遺産は地方の山岳鉄道に限られています。それらと比較すると「高輪築堤」は新橋〜横浜間を結ぶ市街地の鉄道として、極めて稀有な遺構であり、日本の近代化の特性を顕著に物語っていることから、世界文化遺産として評価される可能性も秘めています。そのためには、「高輪築堤」の未発掘部分を含む全面的な保存と、広い範囲での史跡指定をおこなうことが重要と考えます。??2・土木史上の意義と価値
? 「高輪築堤」の文化的価値は、関連学協会よりすでに指摘されている所ですが、先日の現 地見学では、開国・近代化という激動の時代の中で、技術革新をめざす先人たちの創意工夫と精緻な技術、事業成就の気迫を目のあたりにすることができました。? そもそもなぜ、鉄道路線は工事が簡単な陸上ではなく、工事がむずかしい海中につくらねばならなかったのでしょう。しかも2.7kmというひじょうに長い距離を、です。わたしども は歴史の教科書や歴史書で、それは海岸沿いに土地を占有していた陸軍や海軍が用地の提 供を拒んだからと承知しています。それゆえ、海上を汽車が走ることになる「高輪築堤」が築かれました。しかしそれには、海中工事という技術的難度の高い施工技術が必要でした。 このような高度な技術を、当時の日本が有していたことを、まずは注目する必要があります。その実物が発見されたのです。産業遺産学会によると、当時、世界的にみても海上を走る路線はごく稀で,「高輪築堤」は世界の鉄道史からみても、最初期の海上築堤のひとつである、とのことです。? 世界史的にも稀な海上築堤が800m (+500m)、ほぼ完全な形で発見されたのです。しかも大正3年、海側が埋め立てられ、石積み法面が地中に埋没することによって、石積み表面が風化からまぬがれ、また震災・戦災にも無事でした。あまりにもきれいな状態の姿をみて、わたしども見学者一同、感動しました。前書きに「世界文化遺産に匹敵する」と書きましたが、木杭群を含む「高輪築堤」は埋め立てられたがゆえに、世界文化遺産に求められる真正 性(authenticity)や全体性?完全性(integrity)を担保しているといえます。? さらに橋梁部や信号機土台も、当時の姿を彷彿とさせる形ででてきたことも、奇跡に近いものがあります。現代に生きるわたしどもが、これだけ感動しているのですから、当時の人たちが、多くの錦絵を残したこともうなずけます。? 構造物本体をみていきましょう。?まず、築堤の石積み勾配が、現在の築堤勾配と比べゆるいことに気づきます。これは打ち寄せる波の衝撃を少しでも緩和しようとする配慮と考えられます。また船溜まりからの漁船の通行に備えてつくられた橋梁下部分の水路の底にも、石が張られていることが注目さ れます。これは、潮の干満による水路部分や橋台基礎部分の洗堀の予防をかねたものと推察されます。これらの石は、切石で布積みであるとともに、特に橋台は精緻な布積みと小叩き仕上げで化粧目地も施されるほど意匠的に配慮されています。? また詳細は不明な点がありますが、堤体張石と基礎石の安定と移動防止および地盤の安定を目的として、密に木杭が打たれています(地盤安定工法)。海底からの群杭の突き出しは、舟による衝突防止(法面保護)を兼ねたものかも知れません。産業遺産学会によると、このような施工のあり方は、幕末の品川台場建設と共通性があり、台場建設に関わった土工や石工との関わりも判明しているとのことです。その姿を150年後の現在に、そのまま見 ることができたことに私たちは深い感銘を覚えました。? わが国最初の信号機土台部がでてきたことも驚きです。産業遺産学会によれば、このような信号機がどこに設置されていたのか、いままで不明だったとのことです。構造物としての意義と価値はもちろんのことですが、路線線形と機関車速度、機関士からの見え方など、古写真などを見るのと違って、当初の設置現場や堤体の形状、連続した長さが残っていてはじめて実感できる貴重な遺構です。? 以上のように、現地見学だけでも、いろいろな仮説や推論が可能であり、日本の伝統技術と西洋の近代技術との連続性や相互補完性などをつよく想起させるものです。今後の発掘調査の成果に期待すると同時に、世界遺産にも匹敵する、木杭群を含む「高輪築堤」の全面的な保存と国際的にも誇り得る革新的な利活用を要望する理由でもあります。??3・あたらしい価値観の創出ーアフターコロナを見据えた活力ある社会の構築
? 現在、世界がコロナ禍に苦しむ一方、アフターコロナを見据えてニューノーマルな生活様式や社会のあり方が、世界各所で模索されています。これは、コロナ禍以前の価値観が大きく変わりつつあることを意味し、経済活動にもあたらしいコンセプト、手法が求められていることを、私たちは自覚しつつあります。? このような状況において、コロナ前につくられたまちづくり計画もあたらしい局面に遭遇し、それに合致したコンセプトや計画のあり方が求められています。新規開発においても、必ずしもその投資規模や総床面積の大きさではなく、あらたな価値を創造する発想が必要です。とくに今回のように開発計画地区で、国の宝ともいうべき「高輪築堤」が発見された 地域では、遺構のもつ歴史的価値を尊重して、その利活用を開発の主要なコンセプトに取り 入れることにより、文化観光のランドマークの創造をめざすことが考えられます。「高輪築堤」を単なる鑑賞用の記念物とするのではなく、保存された築堤の上を直接人が歩み、150年の歴史を体感できるようにすることも可能となりましょう。? この意味で、コロナ禍を、品川開発ブロジェクト見直しの契機ととらえ、地盤安定と法面保護をかねた木杭群を含む「高輪築堤」の全面的な保存を前提にした意欲的な利活用計画に取り組み、国内だけでなく世界的にも評価されるプロジェクトとしてチャレンジする好機の到来とみることはできないでしょうか。プロジェクトには、6つの街区計画がありますが、たとえ適切な見直しがなされたとしても、一気に施工するのではなく施工段階ごとの評価プロセスを導入し、じっくり再検討しながら進めていくことも考えられます。? 現プロジェクトは、全体としてはコロナ禍前につくられた計画で、オフィス部分が多く、国の宝、世界の宝ともいうベく「高輪築堤Iが発見される以前のものです。高層ビルの減価償却年数は、高々50〜100年で、資産価値は年々減少します。これに対し国史跡に十分相当する「高輪築堤」は、年が経てばたつほど遺産価値は高まり、SDGsの目標に沿い、持続的な価値を追求できます。LCC (ライフサイクルコスト)やLCM (ライフサイクルマネジ メント)の観点からみても優位な「高輪築堤」を生かす計画こそが、アフターコロナを見据えた再開発計画のあり方であり、国際的にも注目される世界文化遺産登録を具現化する道と言えるかも知れません。? 鉄道遺構の木杭群を含む「高輪築堤」を革新的アイデアによって今日的に再生し利活用に供することは、鉄道文化の向上に大きく貢献するとともに東日本旅客鉄道株式会社の文化度や知名度をさらに高める絶好の機会となるに違いありません。その結果「高輪ゲートウェイ駅周辺が、アフターコロナに海外から来日する人びとにとって、まさに歴史都市東京にふさわしい玄関ロとなるとともに、鉄道遺構「高輪築堤」を歩むことが来日の大きな目的になるような文化観光のあり方ともなりましょう。それは日本国民のあらたな誇りとするところであり、長きにわたる日本の文化観光資源として、その役割が大いに期待されるものと考えます。? 今回の木杭群を含む「高輪築堤の」発見は東日本旅客鉄道株式会社の歴史にとっても極めて重要なものだと拝察しています。一部報道によると、現地ではすでに「高輪築堤」の「解体・記録する本調査」が始まったと伝えられていますが、ここで今一度踏みとどまって、記録保存や移築保存によることなく木杭群を含む鉄道遺構「高輪築堤」の全面的な保存と積極的な利活用をめざす取り組みに果敢に挑んでいただけるよう、強く希望いたします。? 100年後の評価という視点も含めて、東日本旅客鉄道株式会社をはじめ、関係各位による鉄道の貴重な歴史の継承への努力と英断に、心から期待しています。? こうした「高輪築堤」の発見と保存・利活用をめざす開発計画の見直しは、以上のような国際的な視野、文化史、魅力的なまちづくり等の観点から、極めて重要かつ価値あるものと考えます。私たち日本イコモスは、文化遺産の保存活用とまちづくりについての専門性を十分に活かし、みなさまとともにこの問題に持続的、積極的に取り組む所存です。???なお、本要望書に対するご回答につきましては、6月9日(水)を目途に、下記日本イコモス事務局宛にいただければまことに幸甚に存じます。?般社団法人日本イコモス国内委員会〒101-0003東京都千代田区ーツ橋2-5-5岩波書店ーツ橋ビル13F文化財保存計画協会気付Fax. 03-3261-5303 E-mail, jpicomos@japan-icomos.org
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(了)
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