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カシアス

絵画の向こう側 

2020年09月12日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

古今の名画を解説する本では、
中野京子「怖い絵」が世に知られている。
「新・・」、「もっと知りたい・・」、「・・泣く女偏」等、
次々とシリーズ本も出され、はまっている人もいるのだろう。

中村隆「絵画の向こう側」は続編なしの一冊だけ、
2007年のNHKラジオ「心を読む」シリーズの解説本だ。
昨今は徒歩10分の会社往復だけの引き籠り生活、
暇つぶしにもう一度読もうと、アマゾンで購入して再読した。

著名な画家の生涯を解説し、絵の成り立ちを解説している。
取り上げている画家は、別格のダビンチ以下、
ゴッホ、ゴーギャン、黒田清輝、藤田嗣治、ルソー、ピカソ、
シャガール、竹久夢二、佐伯裕三、関根正二の11人、
略全員が、不遇で、変人で、生涯恵まれず、
人生に深く悩んでおり、そうでないと、
いい絵は描けないらしい。(黒田清輝は別)
そういえば、小学5年生の時、クラスに、
「枠を超えた広さを感じる」絵を描く同級生がいた。
学校では逞しいガキ大将だが、家は相当な貧困だった。

最後に取り上げられている関根正二が興味深い。
16歳で「死を思うとき」が二科展に入選、
変人で、極貧生活を送り、スペイン風邪から肺炎を併発し、
20歳で亡くなってしまった。生涯に残した作品は26点、
二科展樗牛賞の「信仰の悲しみ」では5人の女性が
何かにとりつかれたように俯いて歩いている。
中央のひとりだけ、衣服にバーミリオンの朱が使われており、
19歳の関根が一方的に恋焦がれた人と言われている。
バーミリオンは高価故思うように購入できなかったとか。

関根の絵は自分の生涯を反映して全体に暗い。
描かれた人物は、何かを考え、訴えているのだが、
その何かが絵の人物にも関根にもよく分からないように思える。
代表作「子供」では、朱色の着物を着た子供が、
暗い表情で何を思っているのか、感じているのか、
関根に直接聞いてみたい気がする。
この本では取り上げていないから、中村氏の解説もない。

因みに「信仰の悲しみ」は倉敷の大原美術館に、
「子供」は東京中央区のブリジストン美術館に展示されている。



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