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パトラッシュが駆ける!
引退
2018年10月20日
テーマ:テーマ無し
十三年前に、店舗兼用住宅を建て替えた。
新しい建物が完成したら、私は、表通りから退き、
側道に面して設けた小店で、規模を大幅に縮小し、
家業の金物店を、続けるつもりであった。
商店会長のところへ行き、これを機に、
退会したいと申し入れた。
商店会の使命の一つが、街路灯の維持管理だ。
通りを明るく照らし、来客を促す。
そのために、会費を徴収している。
私はもう、照明の恩恵に、あずかることもない。
となれば、会を辞めるに、格好の理由になる。
「ただでさえ、会員が減ってるんだ。準会員として、
残ってくれないか」
会長からは、予想通り、泣きつかれた。
しかし、私の腹は、決まっていた。
前々から、商店会活動には、疑問を抱いていた。
街路灯の他に、大した事業を、行っているわけではない。
親睦が主だ。
かねてから、予算の中に占める、
会議費の比率が高いことを、外部から招いた、
コンサルタントにより、指摘されていた。
会議費、つまりは、役員が集まり、協議するための費用である。
それが高い。
即ち、そこで供されるのは、粗茶だけではない、
ということだ。
もう一つ、不満があった。
商店会には、幾つかのグループがあり、そ
れは「○○部」であったり、
公然と「××会」を結成していたりした。
「会内会派」であり、これを派閥と言ってもいい。
それらの間で、微妙な齟齬が生じ、時に対立へと、
発展しかねないところもあった。
どのグループにも、属さない私は「浮いた」
存在であった。
いや、私だって、役員を務めたこともある。
販促活動に関わり、その広報を担当したりした。
しかし、それも数年で退任した。
私の思い描いていた、商店街活動とは違う。
さりとて、私に、会を主導する力はない。
私は、商店会に距離を置き、傍観する、ただの会員となった。
そんな時に、辞める口実が出来た。
私は、建築が決まるのを待ちかね、退会を告げに行った。
* * *
同じだなあ……
という事を、貴乃花が辞める際の「内紛」を眺めつつ、思った。
公益財団法人を名乗ってはいるが、
相撲協会なんて、所詮は、ムラ社会じゃないか……
との思いを強くしている。
そこでは「長」の付く者が、えらい。
様々な権限を握っている。
予算も、その裁量で動かせよう。
その力は、一商店会の長に、比べるべくもない。
貴乃花には、組織改革への願望が、あったと思われる。
但し、具体的にどうするのか……
というところまでは、はっきりと見えなかった。
かつての、偉大な横綱、功労者というだけでは、
衆望は得られなかったであろう。
この世界も、所詮人だ。
「数は力なり」なのである。
数的優位に立つ側からの、一種の村八分と見えなくもない。
どの世界でも、昔からあったことだ。
これに対し、貴乃花は、あっさりと身を引くことで応じた。
現役の頃の、粘り腰と、不屈の闘志は、見られなかった。
もう、嫌気が差していたのでは、なかろうか。
似てるなあ……
と思っている。
文句は言うが、泥まみれになってでも……
という不退転の決意はない。
すぐに、へそを曲げる。
清算の道を選ぶ。
この私にそっくりではないか。
ということを、思っている。
これを「だらしない」ということも出来る。
「甘ちゃん」の謗りも免れまい。
「機を見るに敏」との評は、多分得られないであろう。
しかし、これでいい。
忍従に徹し、不本意を積み重ね、生きて行くだけが、
人生ではあるまい。
私は、彼の処断に対し、同族の不幸を見るような目で、
これを眺めている。
このまま、人生が終るわけではない。
至るところ青山あり、だ。
このまま落魄することも、ないであろう。
ただ一つ、お願いがある。
政界に打って出るのは、止めてもらいたい。
自民党から、選挙に出る。
なお止めてほしい。
仮にも、権力に楯突いた人間だ。
その名が泣く。
醜悪な世界に取り込まれ、飼い殺しになるのが、
関の山だ。
* * *
私は、小店に拠り、家業を引き継いだものの、
やがて、その店も閉じた。
今は、まったく金にならない、囲碁サロンを開いている。
商店会を抜けたのは、正解であった。
会員であることの煩瑣から、すっきりと解放された。
会報が来なくなった。
だから、会員の中に、死亡者が出ても、報せが来ない。
「義理を欠く」ことを、当初は危惧したが、
今はもう、まったく気にしない。
私は、自分が死んでも、葬儀を行うなと、
妻子に言い渡してある。
来てもらう必要がないのだから、行く義理もない。
こう考えると、よけいにさばさばする。
「村八分」とは、絶交するものの「二分」だけは、
残しておこうという、いわば、厳しさの中の温情だ。
それが「葬式」と「火事」であるそうだ。
葬式はいいが、火事は困る。
近隣のお手伝いを頂かないことには、どうにもならない。
だから私は、一分の繋がりだけは、
切らないでおこうと思っている。
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島国根性の一つかも
虎猫さん、
日本人は結局「ムラ」が好きなのです。
というか「ムラ」から、抜け出せないのでしょうね。
だから、多くの組織が、近代性を装いつつ、体質は依然「ムラ」を脱せられないのでしょう。
その「ムラ」において、虎猫さんは、苦労なさったわけですね。
いっそ「ムラ」を見限り、村外に出る。
その方が、精神衛生には、よろしいと思います。
もちろん、身体にも。
おつかれさまでした。
しがらみを逃れ、自由の身を謳歌して下さい。
2018/10/24 20:06:42
組織というもの
自分のことと重ね合わせて読ませていただきました。
嘗て、ある財団法人の「長」の職にありましたが、
ヘッドハンティングされて入った「よそ者」だった私は、古参の中間管理職たちからひどいいじめに遭いました。
結局、癌になって退職しましたが、
まさに、近代型組織の顔をした「ムラ社会」だと実感しました。
澱んだ「ムラ」に新しい風を入れようとして、失敗したわけです。
興味深いお話、ありがとうございます。
考えるヒントもいただきました。
2018/10/24 09:57:11
仲良きことは美しきかな……です
漫歩さん、
それがよろしいです。
いざと言う時に、頼りになるのは、やはり、ご近所さんですから。
私も、商店会は抜けたものの、近隣の皆さんとは、仲よくやっておりますから。
2018/10/21 06:06:15
独居老人の幸運
ー 遠くの親戚より近くの他人 ー、と言いますが、
独り者になってからの私は、正にこのことを実感しています。
生前の妻が残してくれた、向こう三軒両隣との友好で、私は安心な日々を過ごしています。
自らご近所さんを選ぶことは出来ませんから、運がよかったのでしょうね。
2018/10/20 17:43:06