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葵から菊へ
JR黒磯駅待合室案内放送「失行」の損害賠償事件
2018年10月02日
テーマ:テーマ無し
世田谷区最後の超高層マンション建設問題を住民と闘った高橋孝雄さんが、JR黒磯駅の待合室で案内放送がなかった爲に、列車に乗り遅れた問題でJR東日本旅客鉄道株式会社を相手取って訴訟をしている。
友人の門前教三さんが裁判か宛に上申書を提出した。
高橋さんと門前さんの承諾を得たので転載する。
過日『鉄道営業法「失行罪」は「駅のホームドアー設置問題」に当てはまるか』とブログ記事を書いたのは、お二人からの法理論を学んだからである。
・・・・・・・・・・・・・・
上 申 書
平成30年10月 日
東京地方裁判所民事第41部
裁判長裁判官 竹内勉 様
裁判官 高橋玄 様
裁判官 下山雄司様
事件の表示
東京地方裁判所民事第41部合1A係
平成30年(レ)第479号
当事者 控訴人 高橋孝雄
被控訴人 東日本旅客鉄道株式会社
私は、平成30年9月19日、東京地裁第615法廷で上記事件の第一回口頭弁論を、傍聴したものである。上記事件につき申し上げたいことがあるので、本上申書を提出することを、ご寛恕願いたいと思います。
記
本事件は控訴人高橋孝雄が黒磯駅での構内案内放送が行われなかったことで、乗り換え電車に乗り遅れたことに対して、被控訴人に慰謝料を求めたものである。
控訴人は、鉄道営業法第24条に於ける黒磯駅員失行をいう。今回は慰謝料請求という民事事件である。控訴人は、鉄道営業法24条に於ける失行について刑事責任を追及しているのではない。しかし黒磯駅員が控訴人に対して行った行為は、鉄道営業法の失行に該当する。その認識が駅員にあるから、5百円金券を控訴人に渡そうとしたのである。
また東京簡易裁判所民事第9室裁判官鈴木秀夫は、平成30年(小コ)第377号慰謝料請求事件(通常手続移行)の判決(平成30年6月12日)でこう述べる。
「しかしながら、本件全証拠によっても、被告の黒磯駅の駅員が原告を含む乗客一般に対して上記のような義務を負っていたとは認められていないだけではなく、本件当日における原告と被告の黒磯駅の駅員とのやり取り等の具体的な状況下においても、原告に対して上記のような義務が被告の黒磯駅駅員に発生していたと認めることはできない。」
鉄道運輸規定第二章旅客運送第8条に「鉄道ハ停車場に当該停車場ヨリノ旅客運賃表及び当該停車場に於ケル旅客列車ノ出発時刻表ノ摘要を掲示スベシ」とある。
「出発時刻表の摘要」にはこの規定施行時にはなかった次出発の案内放送、電光掲示板等による案内も含まれると解釈するのが、常識であろう。被控訴人はこの当たり前の「摘要」に関して「・・・さらにどの程度まで旅客のために発車案内の放送をすべきか否かは単に旅客サービスの問題であって、被告の黒磯駅員には、列車が同駅を発車する都度、旅客のために必ず発車案内の放送をすべき法律上の義務を負うものではない」と東京簡易裁判所提出の答弁書で述べている(答弁書3ページ)。
ここでいう「旅客サービス」というサービスは、なにを言うのだろうか。いわゆる「サービス」業という生産・製造ではない業を指す総称としてのものなのか。それとも用務、役務をさすものなのか。用務、役務と解釈するとその内容には、当然義務がその中に入っていると思われる。原語のSERVICEには軍務、宗教的奉仕行為の意味もあり、当然義務を含む。
義務を含むサービスと被控訴人は解釈するのであれば、「旅客サービス」でもいい。そうでなくいわゆるサービス業としてのサービスと解釈されるのであれば、発車案内の掲示と案内放送は鉄道運輸規定で定められている、法律的義務と解するのが、妥当であろう。そしてそれが、鉄道営業法24条の失行に繋がるのである。
また、黒磯駅は国鉄時代から、直流、交流の問題での乗り換え駅であり、乗り換え問題には、かなり、きめ細かく対処してきた伝統があったはずである。JRは直流、交流問題では工事で死亡者を出したり、直流・交流電車を配置したり、直流、交流問題を避けるためにヂィーゼル車両を運用してきた経緯もあるのである。乗り換えに対して、より神経質であってしかるべきである。
しかるに、同駅改札口の外の待合室には構内案内放送は流されなかった。寒いプラットフォームの待合室でなく、改札口の外の待合室で次の列車を待っていた原告は、案内構内放送が流れずに、次の列車に乗り遅れた。
黒磯駅の改札口の外の待合室と,5番線ホーム(下り白河方面)に設置されている自動構内放送とは,繋がってはいない。その構造的な問題があると言える。その構造的な問題を、乗り遅れ事件当日に、控訴人は黒磯駅員に指摘したのである。その指摘が5百円金券提示に繋がるのである。
その都度、駅員が改札口の外の待合室に案内放送を行ったり、行わなかったという状態であったと思われる。寒いプラットフォームでなく、改札口の外側の待合室で待つ旅客にも、繰り返し乗車案内をすべきであった。仮にその乗客が高齢もしくは足の不自由な人であれば、同待合室から4,5番線プラットフォームへ行くには、時間で10分程かかるのである。
高齢化社会を迎え、高齢者の利用、さらに様々な身体障害者の鉄道利用が増加傾向にある今日。定義のあいまいな「旅客サービス」ではなく、旅客への義務とすることが、より安全な鉄道の利用の寄与になるのである。
最近の視覚障害者転落事故を受けて、JR、民鉄各社は視覚障碍者への手助けを旅客者に求める構内放送をしている現在である。「鉄道運輸規定第8条の摘要」は狭い範囲での旅客サービスではなく、法律的義務であるとするのが、現代的であろう。そして「鉄道営業法第24条失行」を適用することが、より良い運輸機関を保証することに繋がると考える。
・・・・・・・・・・・・・・
(了)
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