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底知れぬ深さ 

2018年09月03日 ナビトモブログ記事
テーマ:思い出すままに

最近は、比較的夜中に目覚める事が多いので、そんな時は起き出してネットで色々楽しむ事にしている。


数日前は、パリのオペラ座へバレーを見に行った事を思い出した。

が、有名な振り付け師の名前も出てこないし、タイトルも思い出せない。


バッハのオルガン曲「パッサカリア」をオーケストラに編曲した音楽だったことだけが、記憶の頼りだった。


若い男性が、最後に死ぬ、という物語は何となく思いだしたけれど。


まず、パリのオペラ座をググってみた。

歴代の公演を探していたら、有名な振り付け師、ローラン・プチの名前が現れた。


そして、タイトルの「若者と死」

第二次世界大戦の、直ぐ後の作品であった。

脚本は、ジャン・コクトー。



あの時は、主人に付いてニースに一週間滞在した後、シャガールの作品である、オペラ座の天井画が見たくて、パリに一人で居残ったのだった。


オペラが見たかったのだけれど、日程的にバレーの公演に限られた。

ダンサーの友人に、ローラン・プチの事を訊ねてみると、振り付け師の大御所だというので、ネットでチケットを予約した。


パリの街を歩いていたら、至る所で私の見るバレーのポスターが目に付いた。

まあ、毎回のことなのだろうけれど・・。


その日、演し物は三つあった。

下調べもしていなかったし、余り覚えては居ないけれど、とにかくダンサー達のキレの素晴らしさだけは、素人の私にもよくわかった。

リズム感、は言うまでも無いけれど、あのキレの鋭さは、これこそ世界一の水準、と思わせるものだった。

演し物が何であれ、その場に居合わせて、鑑賞出来る事が幸せ、と言おうか。

その場にたどり着くまでには、結構手間は掛かったけれど、始まってすぐ、来て良かった、とつくづく思ったのだった。



そして「若者と死」

抽象的、とまではいかないけれど、装置らしきものも余り無い、がらんとした舞台。

登場人物は、若い男と、死神の化身にも見える、若い女性の二人。

バッハのパッサカリアの音楽を使うなんて、ずるいよ。

俗人の私がつぶやきたくなるほど、言葉のない物語の世界が、一瞬にして形作られている。

これが、ジャン・コクトーの世界なのか・・

踊りの振り付けには、初演をしたダンサーの身体能力に合わせて、アクロバッティングな要素が多分にあるのだという。

大戦直後なだけに、若者達のすぐ身近に「死」というものがあった、時代の影響もあったらしい。


キレの良さ、なんていう事はもう忘れていた。

舞台全体を覆う、緊張感。

それは、憂鬱とも違うし、美しさとも違う。

全てが、最高峰という絆で結ばれている、総合芸術、とでも言えば良いのだろうか。


パリと言わず、ヨーロッパ文化の底知れない深さを、見せつけられた気持ちがした。


数日間のパリ滞在だったけれど、もうその舞台を見ただけで充分、という気持ちであった。



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