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パトラッシュが駆ける!

初段の壁 

2018年07月14日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

捨てられるかどうか……
カギはそこにある。
捨てられない、失うまいとして、必死に守る。
それが人間と言うもの。
そこを乗り越えられるかどうか……である。
私は、人生を語っているわけではなく、実は、碁の話である。

私の囲碁サロンは「初心者歓迎」を掲げていることもあり、級位者が多い。
「級」即ち「段」に達する以前の位置であり、
落語で言えば、二つ目、野球で言えばマイナーリーグ、
相撲で言えば、幕下ということになる。

囲碁をやる者は、誰もが初段を目指す。
人により差はあるものの、長く続けていれば、大方の人が、
到達出来るとされている。
苦節十年、まだ、級のままです。
という人は、碁の修練の、何処かに問題があると思われる。

私の生徒の中には、初段に近い級位者が、何人か居る。
「捨てることを、考えて見なさい」
ということを、折に触れ、言っている。

「これ、ほとんど価値のない石です。そうですね、
道端に落ちている、十円玉くらいのものです」
私は、盤上の石を、お金に喩えて言う。
十円の、はした金に目を奪われては、いけない。
広く盤上を眺めれば、千円、一万円札の、落ちているのが見える。
同じ拾うなら、その値打ちを、よく考えてからにしなさい。
ということを、皆さんに、申し上げている。

捨てる場合も同じ。
「万策尽きて、やむを得ず、取られる。
とは違うのです。
むしろ、意識して、捨てるのです。
もちろん、それに見合う代価を、計算してのことです」
要は、局面局面において、価値の比較を、やりなさいということ。
つまりは、計算高くあれ……ということでもある。

プロは、十目もの石をも、あっさり捨てる。
それに見合う、あるいは、それ以上の利得を考えての、
策戦であることは、言うまでもない。
捨てる代わりに得る。
これを「振り替わり」という。
私達アマチュアは、十目もの石を、容易に捨てられない。
しかし、二〜三目なら、何とか踏ん切りをつけられるのでは、あるまいか。

「わかりました」
やって見ますと、生徒の皆さんがおっしゃる。
「それが出来た時に、初段に手が届くのです」
私は、ここぞとばかりに、その尻を叩いている。

 * * *

私は、もちろん有段者である。
当然に、捨てることにも、慣れている。
かっこよく捨て、かっこよく、代価を得る。
これが決まった時の、快感たるやない。

「囲碁は四段、将棋は初段です」
棋力を聞かれると、私はこう答える。
実を言えば、将棋の初段は、はるかに昔取ったもので、
その後一向に、修練を積んでいない。
だから、もう、級に落ちているだろう。

しかし、小学校に行き、生徒らに、囲碁将棋を教えている手前もある。
段が付かないと、先生として、面目が立たない。
それで、昔取った段位を、誇大に利用させてもらっている。
さながら、ゴルフで、全盛期の頃のハンディを、
今も自称しているようなものだ。

囲碁は負けないが、将棋では、生徒らに負けることがある。
クラブには、二段が一人、初段が数人いて、
しかも彼らは、伸び盛りだ。
俗に「寝ている間も、強くなる」と言われるくらい、
その上達は著しい。
私はもう、彼らには、敵わなくなっている。
そこで専ら、低学年の初心者をつかまえ、教えている。

「駒を大事にしろ。安易に捨てるな」
ここでは、囲碁とは、まったく逆のことを、言っている。
駒を取られる。
それは、敵兵となり、我が身に襲い掛かってくることだ。
そこが、囲碁と違う。
そのことを、分からせねばならない。

これ、私自身への、戒めでもある。
将棋を指しながら、つい、囲碁のクセが出る。
「終盤では、駒得よりも、速度」
という事が、将棋ではよく言われる。
持ち駒を全部捨て、最後に、相手の王様を詰ませればいい。
残った一枚の駒で、見事に詰ませた時の、
そのカッコよさたるやない。

それで、つい、気前よく捨てる。
詰ませるつもりであった。
しかし、一ヶ所、読みに盲点があった。
するりと逃げられ、詰ませそこなった。
そこで、渡した駒が、今度は私の王様に襲い掛かってくる。

囲碁の場合は、単なる十円玉だ。
将棋の場合は、例えば飛車角を、相手に渡すと、
それが五千円もの力を持ち、我が身にに跳ね返って来る。
そのことを、すっかり忘れている。

私は、頭を切り換えねばならない。
「捨てよ」
囲碁の生徒に言い、
「捨てるなよ」
と、将棋の生徒に言い聞かせている。



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親の死に目に会えないと言われるくらいに……

パトラッシュさん

山すみれさん、
囲碁将棋が、どんなものか、一度、覗いて見て下さい。
「見学です」と言えば、皆さん快く、迎えてくれるはずですから。
あの小さな盤上に、大の大人を惹きつけるものが、あるのです。
その匂いでも、感じて頂けましたら、幸いであります。

2018/07/15 16:41:12

囲碁と将棋

山すみれさん

どっちがどっち
と云うくらい 知りません^^。

布草履教室の在る福祉センターの3階は廊下を挟んで、囲碁か 将棋か^^?
何時もやっています。

今度ゆっくり、どちらかを、今日の知識を元に、憧れの世界を

覘かせて頂きます。 感謝です♪

2018/07/15 09:17:51

大丈夫ですよ

パトラッシュさん

漫歩さんは、
句をやっておられることもあり、リスクのりの字も、
感じられません。
要は、頭を使え、ということでしょうね。

偉そうなことを言う私自身、物忘れが増え、困っております。

2018/07/15 05:48:13

興味深々

漫歩さん

碁・将棋にはズブ素の私ですが、実に興味深い話でした。
早くから覚えておけば認知症のリスクはぐっと低下していたでしょうに〜。
後で気が付く・・・・・・・。(笑)

2018/07/14 23:09:07

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