飲兵衛の独り言

連載小説 

2018年06月20日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

私は「志高く」という言葉が好きです。15歳のときに『竜馬がゆく』を読んだのがきっかけで、目からウロコが落ちました。一度しかない人生、世のため人のために、引きちぎれるほど頑張って何か事を成さなくてはならない。志高く生きなければ、と思ったのです。
ソフトバンク社長、孫正義


 司馬遼太郎氏の『竜馬がゆく』
の連載が産経新聞・夕刊紙上で始まったのは、今から56年前
1962(昭和37)年6月21日のことでした。

4年後の1966年5月19日に完結した同作品は、それまで一般的には知られていなかった坂本竜馬という人物を一躍有名にし一挙にファンを増やしたばかりか、現在認知されている?竜馬像?を確立したといえましょう。

そもそもこの作品を執筆するきっかけになったのは、司馬氏の産経新聞在籍時の後輩・渡辺司郎氏(元・産経新聞社常務)から、

「自分の出身地である土佐に、坂本竜馬という男がいる。 この男のことを書いて欲しい。」

と依頼されたことだったとか。

しかし司馬氏は、当初乗り気ではなかったといいます。

それ故、この依頼にすぐ応えようとはしなかったそうですが・・・他の小説の資料を集めていると不思議と坂本竜馬の名が出てくることに興味を抱き、本格的に彼の調査を始めたといいます。

神田の古書店でワゴン車1台分・約1,400万円相当もの古書・古文書を買い集めて練られたこの作品は、その後単行本全5巻・文庫本全8巻として出版され、更に何度も改版されて多くの方に読まれることになりました。


ところでこの作品に関し、印象深い出来事がありました。

それは、世にいう?ちょうりんぼう事件?。

1983年、京都新聞の広告に?ちょうりんぼう?という差別用語が使われたことに部落解放同盟が抗議したところ、同新聞社が
「『竜馬がゆく』に使われていた言葉を引用した」
と司馬氏に責任をなすりつけるかのような釈明をしたのです。

これを受けて解放同盟は矛先を司馬氏に向けて糾弾。

司馬氏は、作品を書いた当時この?ちょうりんぼう?という言葉が差別用語だとは知らず「馬鹿」を意味する古い土佐弁だろうとの認識だったとか。

同年12月に京都部落解放センターでの差別確認会に出席した司馬氏はここで『長吏(※日本における賤民の呼称のひとつ)と人間の尊厳について』 という釈明文を朗読。

当初ヤジや怒号で会場内は騒然としていましたが、やがて彼の朗読する部落差別批判と見事な文章に参加者は静まり返り、以後司馬氏に対する糾弾は影を潜めました。

これ以降、司馬氏は出版社に対して?ちょうりんぼう?という単語の削除を申し入れたそうですから、これが記載されている 『竜馬がゆく』 は、35年以上前に出版されたものということになります。

古い本をお手持ちの方は、ちょっと確認してみてはいかがでしょう。



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